『昭和堂薬局』

がんと免疫

がんと免疫

 世界の死因統計からみると「がんで亡くなる国」と「心筋梗塞で亡くなる国」があります。日本は1992年にがんが死亡順位の1位になり、日本は「がんで亡くなる国」になりました。現在3人に1人ががんで亡くなっており、将来2人に1人はがんで亡くなると言われています。
 日本は世界でトップクラスの長寿国で、がんは老化とともに必然的に発生してくる病気であり、がんになるリスクは、40歳以上80歳まで5年ごとに約2倍ずつ高くなるといわれています。
 しかし、がんの2/3は予防できるといわれており、ヒトの発がん因子を検討した研究として、リチャード・ドル博士らによる報告があります。それによると人のがんの約2/3は、食事や喫煙などの生活環境にかかわる要素が原因となっていることが指摘されています。
 たとえ発がんリスクの高い基礎疾患や遺伝性素因を持っていても、食生活や生活習慣を改善することにより発がん過程を抑制できることが明らかとなってきています。
 がんの予防を推進する上で、「医食同源」や「養生」という東洋医学の考え方や方法論が参考になります。
 また、がんになってしまうと多くの人は死を連想しますが、がんを克服している方も多くいらっしゃいます。前向きにがんと向き合い対処していくことで道は開けます。

がんとは

 成人の体は約60兆個の細胞から成り立っています。体の全ての臓器や組織は様々な細胞によって構成されています。これらの細胞は、数を増やす必要が生じたときだけ、分裂・増殖します。ところが、必要もないのに、細胞が勝手に増殖して、異常な細胞の塊を生じることがあります。この異常な細胞によって作られた塊を腫瘍とよびます。腫瘍には良性腫瘍と悪性腫瘍に区別され、良性腫瘍は増殖が遅く局所的に細胞の塊を作るだけですが、周囲の正常な細胞や組織をも破壊してしまう性質を持ったものが悪性腫瘍、すなわち「がん」なのです。がん細胞はまた血液やリンパ液に乗って、離れた臓器に転移し、そこで新たな腫瘍を形成します。つまりがん細胞とは、正常な組織を破壊し、他の臓器に転移を繰り返しながら、無限に増殖しつづけ、ついには宿主である人間を死に至らしめるものなのです。

発がんのメカニズム

 遺伝子の情報は細胞の核の中にある染色体のDNA(デオキシリボ核酸)に書き込まれています。DNAの遺伝情報には、細胞を形作り機能させるための蛋白質の作り方と、その発現の量や時期を調節するために必要な設計図が組み込まれています。したがって、この遺伝子情報に誤りが生じるとその細胞の働きに異常が生じます。特に増殖や分化に関連する遺伝子に異常が生じると細胞は際限なく分裂を繰り返すがん細胞となるのです。
 遺伝子が誤りを起こす原因は、DNAに傷がついて間違った塩基に変換したり、遺伝子が途中で切れたりするためです。これをDNAの変異と呼び、DNA変異を引き起こす物質を変異原物質とよびます。環境中には、たばこ・紫外線・ウイルス・食品添加物など変異原物質が多くあります。変異原物質は、栄養の分解など体内の代謝の過程でも作られます。
 このような多くの原因により細胞レベルでは、遺伝子の変異が日常的に起こっています。しかし、ほとんどの場合は遺伝子レベルで修復機構が働き、細胞の働きは正常化されています。ところが何らかの原因により突然変異がそのまま定着する場合もあります。突然変異を起こした細胞が分裂とともに増殖する結果が、がんという病気につながっていくのです。たとえがん細胞が増殖しだしても免疫力が正常であれば、がん細胞は体から排除されてしまいます。しかし、老化やストレスなどによって免疫力が低下するとがん細胞の増殖を許してしまい、がんという病気になるのです。


がんの標準的治療

 がんの標準的治療には手術、放射線療法、抗ガン剤などがあります。
 がんの広がりが体の一部だけに限られている時は手術が第一に選択されます。悪い部分を完全に除去できるときには手術が優先されます。放射線療法とはがん組織にX線やγ線等を当て、ガンを死滅させる治療法です。がん細胞を殺す作用のある化学薬品(抗ガン剤)を注射したり内服したりして治療する方法を化学療法と呼びます。抗がん剤はがん細胞のDNAを破壊したり、タンパク合成や細胞分裂を阻害して細胞を殺しますが、正常な細胞にもさまざまな障害をもたらす点を持っています。一口にがんと言ってもその性質は千差万別です。がんの種類によっては「抗がん剤が効きやすいがん」もあれば「効きにくいがん」もあります。
 標準治療は、大きな腫瘍の塊を除去する、大量増殖中のがん細胞の総数をざっくり減らすことは得意です。ところが、全身に散る危険ながん細胞を根絶することが苦手です。

がんに対抗するには

 がんに対抗するには「がん細胞の強さ」と「体の免疫力」のバランスによって決定されます。がん細胞の増殖の強さが免疫力に勝れば、がんは悪化して死に至ります。しかし、がんに対する免疫力や自然治癒力などを十分高めれば、延命することもがんを克服することも可能です。『がんを攻撃する西洋医学の治療法』に、『体の免疫力を高める漢方薬など』を積極的に取り入れることがよりレベルの高いがん対策となることは明らかです。
 また、がんの約2/3は、食事や喫煙など生活環境にかかわる要因が原因となっていることが指摘されています。たとえ発がんリスクの高い基礎疾患や遺伝性素因を持っていても、食生活や生活習慣を改善することにより発がん過程を抑制できることが明らかとなってきているととからも、食生活や生活習慣の見直しが、がんに対抗するためには重要になってきます。

国立ガンセンターが示した「がん防止12ヵ条」を紹介します。
1 偏食をしないでバランスのとれた栄養を摂る
2 なるべく同じ食品をくり返し食べない
3 食べすぎを避ける
4 アルコールを飲みすぎない
5 タバコを吸わない
6 ビタミンと繊維質のもの、緑黄色野菜をよく摂る
7 塩辛いものを多量に食べない
8 熱すぎるもの、ひどく焦げた部分は食べない
9 カビの生えたものは食べない
10 過度に日光に当たらない
11 過労を避ける、ストレスをためない
12 体を清潔にする

最後に…

 がんはなんらかの原因で免疫力が下がったことで起こったことです。ストレスや食生活、生活習慣は免疫力に大きく関わっています。ですから、西洋学的治療や東洋学的治療だけに頼らず、生活習慣や食生活の改善とストレスの克服などが重要になります。


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