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やすらぎ通信平成28年お盆号

やすらぎ通信平成28年お盆号

 

 夏本番になってきました。日本は島国ということもあり高温・多湿でこの時期、食欲もなくなり体力も奪われます。そんな時期に「土用の丑の日」があり、鰻の蒲焼を食べることが習慣になっています。今回はその土用についてお話したいと思います。
土用(どよう)
 土用は、正式には土用用事といいます。土用というと夏を思い浮かべる方も多いと思いますが、土用は各季節の変わり目にあります。以前に春夏秋冬の養生の話をしましたが、これは五行説に基づいた話です。五行というくらいですから五つないといけないですよね。この五行説では、万物を木・火・土・金・水に分かれるといっています。春夏秋冬の4つともう一つが土用というわけです。土用は立春、立夏、立秋、立冬の前約18日間をいい、季節というよりは、一つの季節から次の季節に変わる調節の期間というわけです。土は、万物を生み育てるという変化を司る性質があります。そのことからも、各季節の終わりに「土」がものを変化させることを意味します。土用に入る日を「土用入り」、土用が終わる日を「土用明け」といい、今年の夏土用は、土用入りが7月19日で土用明けが8月6日です。
 土用の時期は、季節の変わり目ということもあり体調を崩す人も多くいます。特に暑さも厳しく疲れやすくなる夏土用は、古くから精のつくものを食べる習慣があり、よく知られたものに「土用うなぎ」があります。その他に「土用しじみ」「土用餅」「土用卵」などがあります。これらは栄養価が高く、体力の落ちた体のエネルギー源となるものです。夏土用に限らず、土用は季節の変わり目で体調を崩しやすい時期ですから、こうした精のつくもので体を補う必要があるのです。夏バテに鰻を食べるという関係は古く、奈良時代から食べられていたようです。また、土用の丑の日に鰻を食べるようになったのは、一説には江戸時代の万能学者であり、発明家でもある平賀源内が仕掛けたもので、知り合いのうなぎ屋さんが夏はうなぎが売れないと困っていたのを見て、店の前に「土用丑の日、うなぎの日」という貼り紙をしたのです。これが大当たりして、土用の丑の日にうなぎを食べる風習になったといわれています。
◆ 土用は五臓六腑では「脾・胃」と関係
 土用は、五臓六腑では「脾・胃」と関係が深く、また「脾・胃」が疲れやすい時期です。
東洋医学では、「脾」は西洋医学の脾臓とは異なり消化吸収を担う器官です。「脾」は気や血を生み出す働きがあり、「後天の本(後天的なエネルギーや栄養の元)」または「気血生化の源」と呼ばれる重要な臓器です。その働きは、飲食物を消化吸収し、得られたエネルギー(気)や栄養(血・体液)を全身に運ぶ役割があります。私たちの身体を健康に維持する大本であるため、「後天の本」と呼ばれるのです。ちなみに「先天の本」は精のことで親から受け継いだエネルギーや栄養のことです。
 五臓六腑の源である「脾・胃」が健康であれば、筋肉や四肢も力強く、食欲も旺盛で元気に生活できます。逆に「脾・胃」が病んでしまうと、食欲不振や消化不良などの消化器症状や体液が流れにくくなり、血や水が滞り、めまいやむくみ、口の粘り、肌荒れなどが現れます。「脾・胃」は栄養の供給源ですから、「脾・胃」が元気で食欲もあることは、体全体が元気で長生きできるためでもあります。
 土用に衰えやすい「脾・胃」を補うのが甘味の食材です。甘味は、砂糖や蜂蜜などの甘味の調味料をはじめ、穀物や野菜、豆類、肉、魚などかなりの食物が甘味に属します。すべての食材を五味に分けると約7割が甘味の物なのです。土用に食べられる伝統的な土用鰻や土用しじみ、土用餅、土用卵も甘味に属し、「脾・胃」を補う物が選ばれているのです。
◆ 土用うなぎ
 「うなぎ」には良質のたんぱく質、ビタミン、ミネラルがバランスよく含まれ、強壮食品として理想的な食物です。体を温める温性のため、夏場、水分や冷たいものの摂りすぎで弱っている胃腸を保護するにはうってつけです。うなぎに豊富に含まれるビタミンEは、血液の流れをよくする効果があり、冷房で悪化した血液の流れを促すのにも役立ちます。
 うなぎには必ず「山椒」が添えられますが、ここにも先人の深い知恵が秘められています。辛味に属する山椒は、防腐、殺菌効果が高く、暑い盛りに食べたうなぎが、腸内で腐敗発酵するのを防ぐ役目を担っているのです。胃腸の働きを活発にして、脂っこいうなぎの消化を促進する効果もあります。山椒のピリリとした辛味と風味は、うなぎ独特の臭みを消し、濃厚な蒲焼きの味を引き締めます。さらに、苦味の「肝吸い」まで飲むと、より脾・胃を滋養する食べ物としてバランスがよくなります。脾・胃を生み育て、働きを生かすのが、苦味だからです。苦味(心)の相剋にあたるのが「肺・大腸」ですが、これは山椒によって補える組み合わせになっているのです。ただし、うなぎは脂肪分が多いため、胃腸が弱っている場合は控えましょう。とくに、冷たいものとの食べ合わせは避けたほうがよいでしょう。脂肪分と一緒に冷たいものを食べると消化しにくくなるからです。
 もうひとつ、夏バテ解消の妙薬となるのが「麦とろ」です。大麦は五穀の長といわれ、五穀の中でも薬効が高いとされ、体を冷やす作用があります。「やまいも」は脾・胃の働きを助け、滋養強壮、消化促進作用があります。これに、「ねぎ」や「わさび」などの胃腸の働きを助ける薬味を添えれば、最強の夏バテ撃退食といえるでしょう。
 疲労物質を取り除いてくれるクエン酸を豊富に含んだ「梅干し」や「酢の物」など、酸味の食材も夏の疲れを癒し、低下した食欲を回復してくれます。
 暑い時期は、そうめんや冷や麦など冷たい麺類でさっぱりという人も多いですが、炭水化物のエネルギーは吸収されても、体を温めるたんぱく質が不足して、冷えを助長することにもなりかねません。そうめんや冷麦を食べるときは体温を上げ、体を内側から温めてくれる、肉や魚、豆腐、卵などのたんぱく質を摂るようにしましょう。
 夏バテだからといって食べないと体力は低下して、やる気も元気もなくなります。夏こそ食が肝腎です。毎日の食事で体のバランスを整えてください。

昭和堂薬局 | 2016年7月5日


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