『昭和堂薬局』

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食欲とは…

 人はなぜ食べるのでしょう?その結果として太ってしまう人がいるのは何故でしょう?
  我々は、体を構成する原料としての栄養と生きるためのエネルギー源としての栄養を食べ物から得ています。
 そして、脳は体のエネルギー状態や個々の組織の代謝状態を常にモニターして状況に応じたエネルギー摂取と消費を制御しています。この食事の制御を「homeostatic(恒常的)」と呼び、またそれとは別に、恒常的食事を超えて食べてしまう事があります。このことを「hedonic(快楽的)」と呼んでいます。

 

 食欲は、脳の視床下部という所で調整されています。この調整は、末梢の脂肪組織や消化管などから出るホルモンや神経系の伝達で制御されています。通常はこれらの制御により摂食と代謝のバランスが取れていて、肥満が起こることはありません。しかし、上述した、快楽的な経路が別にあり、これが「報酬系」とも呼ばれ、性行動や摂食行動で起こる「快感」と関連していて、薬物依存や過食行動に関与しています。

 

 では、太ってしまった人の脳では何が起こっているのでしょうか?

 脳の中枢神経は、摂食やエネルギー代謝を調整するだけでなく、末梢組織の糖・脂質代謝を直接制御する事が明らかになりました。また、肥満すると末梢組織では炎症が起こることは以前からいわれていますが、脳の視床下部でも炎症が引き起こされている事が分かって来ました。動物実験では、高脂肪食を摂って肥満したマウスは視床下部で炎症が起こり、IKKβ/NF-κBという経路が活性化します。逆にその経路の活性を抑制すると高脂肪食の過食が改善しました。人でも炎症反応を示唆する反応が確認されています。

 

 肥満の人の行動特性としては?

 体の解析技術の進歩により、食べ物を食べると肥満の人の脳で何が起こっているのか分かって来ました。通常は、摂取した脂肪が報酬系を活性化し、満腹感を作り出すのですが、肥満の人では、通常量では充分な刺激にならず、満足感が得られない為に量が増えてしまうのです。

 

 では、健康な体を手に入れる為にはどうすれば良いのでしょうか?

 個々の状況に若干の違いがあると思いますが、先ずは食事の質を変える事です。量を減らすのではなく、高脂肪食を止める事と、体に炎症が有るので炎症を抑制する脂質を摂ることで炎症を起こす脂質とのバランスを整えます。栄養素のバランスも考慮しましょう。不足した栄養素を体が欲してしまうと食べたくなります。また、腸内環境も肥満に影響しますので食物繊維を積極的に摂りましょう。しかし、過度な便秘や基礎疾患がある方は注意が必要です。

 


昭和堂薬局 | 2017年4月29日

 

自己免疫疾患

 自己免疫疾患には、色々な疾患タイプがありますが、基本的には自己反応性T細胞(自分を攻撃してしまう免疫細胞)が中心的役割を担っています。私が数十年前に大学にて免疫学を学んでいた時には、胸腺で自己抗原高親和性T細胞(自分に強く反応してしまう免疫細胞)は除去されることになっていました。しかし現在の免疫学では、胸腺での自己抗原高親和性T細胞の除去は完全ではないことが解ってきました。また末梢でのチェック機構として、抑制性T細胞(免疫反応を抑制する免疫細胞)による自己反応性T細胞の不活化です。

 

 なぜ、これらのチェック機構をかいくぐって、自己反応性T細胞の活性化が起こるのでしょう?
通常、健常な方の体にも自己反応性T細胞が存在しています。しかし、健康な人たちの自己反応性T細胞の大部分は未活性T細胞として存在しているため、自己を攻撃しないのです。

 

 なぜ自己免疫疾患は起こってしまうんでしょうか?
何らかの影響で、未活性T細胞が活性化してしまうことが一番の原因です。

 

 どうして活性化してしまうのでしょうか?
何らかの遺伝的影響もあると思いますが、環境的原因としては体の中で炎症が起こったことで眠っていたはずの未活性T細胞が、その影響を受けて活性化してしまったことです。

 

 なぜ、炎症が起こったのか検証が必要ですが、食の乱れやストレスによって腸内細菌叢が変化しても炎症は起こります。また末梢の抑制性T細胞は、腸内細菌が作る短鎖脂肪酸(特に酪酸)の刺激により誘導されることが解ってきました。

 

 どんなことをするといいんでしょうか?
腸内細菌叢を良い方向に変えることができれば、炎症を抑えることができる可能性があることと短鎖脂肪酸酸性菌が増えれば抑制性T細胞の誘導もできる可能性があります。

 また、すでに起こってしまっている炎症を抑えていく可能性があるものとして炎症抑制性の脂質(ω3系脂質)を摂ることです。この脂質は、αリノレン酸で亜麻仁油、えごま油に含まれ、体の中で変化するとEPA・DHAになります。EPA・DHAは魚にも多く含まれる油です。

 

 この様な体を作ってしまった一つの原因(きっかけ)は食事です。食べるものの質、脂肪酸の摂り方など食事を見直していくことで体は変わります。炎症を痛みとして感じる関節リウマチの人は、食事を変えることで痛みが軽減します。
この機会に、自分の食生活を見直してみるのはいかがでしょうか。


昭和堂薬局 | 2017年4月14日


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