『昭和堂薬局』

WhatsNew

 

産後うつについて

 9月19日のコラムでお話しした「産後うつ」について、現在までわかっていることをお話したいと思います。

 

 出産後1年未満に亡くなられた方の内訳をみると半数近くが自死によるものであり、専門家は産後うつが関係しているとの報道がなされました。現在、産後うつに対して選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)などの標準的な抗うつ剤が処方されていますが、産後うつの場合、神経伝達物質のセロトニンの関与は少ないと言われています。

 

 妊娠すると生殖系のホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが上昇します。また、プロゲステロンの代謝物であるアロプレグナロンというホルモンの脳内レベルも上昇します。このアロプレグナロンは、抑制系の神経科学物質GABAの受容体を活性化します。しかし、妊娠中はアロプレグナロンによるGABA受容体の過剰活性化を避けるため、GABA受容体は休眠しています。

 

 産後、エストロゲン、プロゲステロン、アロプレグナロンは直ちに正常に戻ります。通常GABA受容体の活性も同様な回復をみせるのですが、産後うつになられる方はGABA受容体の活性回復に時間を要し、そのことが発症を引き起こすと言われています。ただし、それのみが原因となっているのかは今のところ判明しておりません。

 

 最近、このアロプレグナロンのレベルを下げることでGABA受容体を活性化し、健全なレベルを保つ新薬の臨床試験が海外で始まっています。現在までの結果は有望のようです。
しかし、この新薬の普及にはまだ時間がかかると思われます。どの程度効果があるのかも、まだわかりません。(そして、副作用の問題も…)

 

 中医学的には妊娠・出産・授乳は全身の血を消耗します。また、出産時に出血や体力の消耗により気血をさらに消耗し、心血が不足することで不安感が増し、産後うつを引き起こす原因になります。

 

 このようなことを防ぐために、陰血を妊娠中から補い、産後すこし変だと感じたら心血を補う漢方などを服用するのがお勧めです。


昭和堂薬局 | 2018年12月11日


横浜ポルタ内にある漢方薬局。あなたの健康な体を取り戻すお手伝いを致します。