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中医学的“血”って何⁈

 「血」と聞くと、“血液でしょ”と思われる方が多いと思います。
中医学的な「血」は、西洋学的な血液よりも少し広い概念があります。
中医学において「血」とは、「血管中を流れる赤色の液体で、人体を構成し、生命活動を維持するうえで基本的な物質」と言われています。

 

 「血」が作られる経路は2つあり、ひとつは食べ物(水穀)から作られた気(営気)と水(津液)が混じり合い、脈に注がれて赤くなったもの。
また、腎に存在する「精(腎精)」が血に変化することからも作られます。
腎精は髄を生じ、骨を満たし、その骨から血が作られるという経路があります。
2つ目の経路は骨髄から血液が生じるという点で西洋医学的にも立証されている作られ方ですね。

 

 では中医学的な「血」は身体の中でどんな働きをしているのでしょう。
1つは、営養作用といわれるもので、これは血が脈の中を流れ、全身に行き渡り、身体の隅々まで栄養と潤いを与えます。
したがって「血」が不足すると、皮膚の色がくすんだり、爪が割れやすくなったり、髪の毛が細くなったり艶やコシが無くなったりします。ふくらはぎや筋肉のつりも同様で、筋肉のけいれんやつりに良く効くといわれている芍薬甘草湯も「血」を補う処方です。(特に“肝血”を補い、肝は筋肉と関連が深い臓です。)
2つめは、安神作用と呼ばれ、人間の精神や意識と深く関わりがあります。
少しイヤな例えですが、“出血多量で意識不明の重体”などの現象があるように、血が不足すると意識・無意識の切り替えがうまくいかず眠りに入り辛い、睡眠が浅いなどの現象が起こりやすくなります。
「血」が少ないにもかかわらず全身に行き渡らせなければならないため、ポンプの役割である“心”が一生懸命に動くことになり、動悸などの症状も出やすくなります。
「血」が少ない事で“心”が安定した動きができなくなる=“安心”できなくなるために、不安感などの症状も出てくる場合もあります。

 

 特に女性は、血との関わりが深く、月経、妊娠、授乳など女性にしかできない素晴らしいことができる力が備わっているが故、男性よりも血を消耗しやすく、陰陽学説において女性は陰に属するとあり、同じく陰に属する「血」の影響を受けやすいのです。
補血の漢方、「婦宝当帰膠」が女性に人気があるのも頷けます。
東洋医学の知恵を用いて、いつまでも艶のある女性を目指してみませんか。


昭和堂薬局 | 2018年5月31日

 

東洋医学のよく言う“気”ってなに?!

 元気、気合い、気力、天気、空気など気という字がついている言葉はたくさんあります。
では「気」とはどんなものなのでしょうか?
昔から、目に見えない力やエネルギー(物理学的エネルギーや熱エネルギー)のことを「気」と表現していました。中医学でも「気」は非常に大切な概念です。

 

 「気」というエネルギーは体の中で、どんなことをしているのでしょうか?

 

 中医学でいう「気」の作用の一つが推動(すいどう)作用です。臓腑(内臓)を動かし、血や津液(体に必要な水)などモノを「動かす」力が推動作用です。
「気」が足りないと様々な「滞り」が起こってしまいます。気が不足すると血のめぐりが悪くなったり、臓腑がうまく働かなくなったりします。

 

 「気」の作用の二つ目は温煦(おんく)作用です。熱エネルギーや体温の事を指し、体を温める力が「気」にはあります。「気」が足りないと寒がりになります 。クーラーに弱い人も「気」が足りていない可能性があります。

 

 「気」の作用の三つ目は防衛作用です。体を守る力です。免疫力に近い概念です。「気」が足りない方は 、風邪をひきやすくなったりします。
気が張っていて風邪を引かなかった。気が緩んで風邪を引いた、などの表現を思い出していただければわかりやすいかと思います。

 

 「気」の作用の四つ目は固摂(こせつ )作用です。
漏れを防ぎ、元の位置(固有の位置)に留める作用です。私たちは重力の影響下で生活しているにもかかわらず、内臓が体外に落ちることなく生きています。
尿もれ、不正出血、胃下垂、子宮脱・脱肛などが「気」の不足によって起こることがあります。

 

 「気」の作用の五つ目は気化作用です。モノを変化させる作用です。食べたものを血液や筋肉などに変化させ、食べたものの糟粕を大便に変化させる作用の事を指します。
少し難しいのですが、例えば要らない水分を尿に変える時に「気」の力が必要と考えます。よって「気」が足りないとむくみや尿が少ないなどの症状が出ることもあります。

 

 「気」の作用の六つ目は営養作用です。体を滋養する作用です。疲れやすい、太れないという方は「気」が不足していると考えられます。

 

 以上のような働きの「気」ですが、これが不足してしまうということは、食べ物や呼吸により「気」をうまく作れなくなったり、必要以上に「気」を使ってしまって製造が追いつかないときに起こります。

 

 気の不足は、臓腑でいうと脾胃(胃腸)がうまく働かないことから起ることが多く、中医学において脾胃(胃腸)は“湿”を嫌う傾向があり、特に気温や湿度が高くなると胃腸に負担がかかるので注意が必要です。
まして中国のような大陸と違い、日本は島国で周囲を海に囲まれており、一年を通して湿度が高く、そこに暮らす私たちの脾胃に掛かる負担は同じ黄色人種の中華圏の方々よりもはるかに高いといえるでしょう。
日本の伝統的な食文化は素晴らしいものですが、生冷物(生もの)の過食は気の温煦(おんく)作用の低下を招きます。
食材だけではなく調理方法のバランスにも気をつけた食事を心がけ、脾胃(胃腸)を大切にし元気に初夏をお過ごしください。


昭和堂薬局 | 2018年5月23日

 

油とうつの関係

 春になると、メンタルの相談が増えてきます。パニック障害やうつ病が主な疾患です。一般的にも5月病などを聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

 

 1998年に、魚食量が多い国ほどうつ病が少ないという地域相関が発表されてから、魚油に含まれるω3系脂肪酸と精神疾患の関連の研究が盛んにされてきました。そんな中、国際栄養精神学会では、精神疾患の予防や治療の補助に貢献する栄養素として、ω3脂肪酸を挙げています。

 

 うつ病の方の末梢血多価不飽和脂肪酸を解析した研究では、うつ病患者は健常人に比べエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)が低値であることが示されました。

 

 また、うつ病治療におけるω3系脂肪酸の効果を検討したランダム化比較試験では、EPA含有量が高いω3脂肪酸を与えた場合に有効で、DHA中心のω3系脂肪酸では効果が得られにくく、ω3系脂肪酸摂取はうつ病が重症なほど効果が大きいことが示されました。

 

 人の精神機能や精神疾患のメカニズムは、科学が進歩した現在でもその解明はまだ十分なものではありません。しかし、うつ病患者さんの体内では炎症性サイトカイン(IL-1やTNF-α)が増加してくることは解っています。EPAは抗炎症性の脂肪酸であることは良く知られています。この抗炎症作用が抗うつ効果に関与していることが推測されます。

 

 最近、いろいろな病気と慢性炎症の関係が言われています。精神疾患であるうつ病も関係しているということは、非常に興味深い結果だと思います。現代の人はω3系脂肪酸の摂取量が少ないことが問題視されています。それと比較して、その他の油(ω6やω9)を多く摂取する傾向にあります。このことが体に微弱な炎症(慢性炎症)を引き起こし、病気を呼んでしまうのではないでしょうか。

 

 健康のためにどんなことをしていけばいいのか?何となく見えてきていますよね。


昭和堂薬局 | 2018年5月7日


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