基礎体温から体の状態(排卵の有無、黄体機能の推測、妊娠など)を推測することができます。漢方は、体全体のバランスを見ます。そのバランスが基礎体温に現れるのです。 漢方的にバランスとは「陰」と「陽」のバランスです。基礎体温でいうと低温期を「陰」、高温期を「陽」ととらえます。生理周期に関係しているのは、生殖をつかさどる「腎」です。特に不妊症では「腎」の衰えにより「陰」「陽」のバランス(ホルモンバランス)が崩れているのです。 このバランスの乱れを基礎体温から推測し、生活習慣の改善や漢方薬で「陰」「陽」のバランスを整えて妊娠力を高め妊娠しやすい体にするのです。 基礎体温の測り方 5時間以上の睡眠をとった状態で(できれば測定時刻がずれないように)朝目覚めたときに舌下で婦人体温計を使って測定します。目覚めた後、時間が経って測定すると体温が上がってしまいます。また、土日(休日)など寝坊をすると体温が高くなります。 記録内容 体温、月経期間、腹痛、不正出血、おりもの、性交(セックス)、風邪、服用期間など詳しく記入します。 忘れたときは空欄のままで線を引かないで下さい。 但し、測定がストレスと感じたらやめましょう。(3か月は測りましょう) 基礎体温表を見て推測できること *排卵の有無が推測できる 二相性なら排卵している(例外:黄体化未破壊卵胞LUF) 一相性なら無排卵 *排卵の時期が推測できる(周期が安定している女性) タイミング指導ができる *黄体機能が推測できる 高温相が10日~14日 温度差が0.3度~0.5度 高温期途中で体温が一時低下するなら黄体機能不全 *卵胞の育ち、内膜の厚さが推測できる(頚管粘液) *高温期が3週間以上持続で妊娠の可能性がある 理想の基礎体温 1.生理周期は、28~35日。周期がずれても7日以内なら問題ないでしょう。生理周期が21日以下の場合は、卵胞の成長が充分でない可能性があります。また、40日以上の場合は、排卵のトラブルの可能性があります。 2.低温期と高温期の温度差が0.3℃以下の場合は、黄体ホルモンの分泌が少ない黄体機能不全の可能性があります。 3.高温期は12~14日持続します。12日以下の場合は、黄体機能不全の可能性があります。 |
周期が短い |
卵胞が充分成長していない可能性があります。また、機能が低下した卵巣を刺激しようとして、常に脳から「卵を成長させなさい」という指令が出たままなので、ホルモンバランスをつかさどる「腎」に負担がかかってしまいます。リラックスする、夜更かしをしないなど、生活習慣の改善が必要です。漢方薬では、卵胞の成長を助ける「陰」を補います。 |
高温期がない |
無排卵または無月経の可能性あり、この状態が続くと妊娠できません。多嚢胞性卵巣症候群などの病気によって卵巣機能が乱れているケースもあるので、まずは病気が隠れていないかを病院でチェックしましょう。漢方では、ホルモンバランスをつかさどる「腎」を高めるのと同時に、体のエネルギーである「気」の流れや、体に栄養やうるおいを届ける「血」の流れを良くする漢方薬を使います。睡眠や休息もしっかりとりましょう。 |
高温期中に体温が下がる、高温期が12日未満 |
黄体ホルモンが充分に働かないため子宮内膜が厚くならず、着床しにくくなる黄体機能不全の可能性があります。ただし、低温期に卵胞が充分に成長できなかったのが原因であるケースもあります。ホルモンバランスをつかさどる「腎」の機能を補い、卵胞の発育と黄体機能を高める漢方薬を使います。 |
体温の変動が激しい |
ストレスや睡眠不足が続くとき、また、プロラクチンというホルモンが多く分泌されているときにみられるパターンです。この場合も排卵がスムーズに起こらないので、「気」と「血」の巡りをよくするために、ふだんの生活でリラックスを心がけることが大切です。漢方薬は、「気」「血」の巡りをよくし、プロラクチンを抑制するものを使います。 |
生理中に体温が上がる |
生理中に1日だけ体温が跳ね上がるようなときは、「血」の巡りが悪く「?血」の状態であると考えます。「?血」は月経血の排泄を滞らせるので、卵胞の発育や排卵、黄体機能にもダメージが起こります。さらに、生理痛のひどい、血のかたまりが多く混じるときは、早期の子宮内膜症やチョコレート膿腫などの可能性もあります。とにかく体を冷やさないようにし、血流を良くする漢方薬を使います。 |
高温期の移行に時間がかかる |
高温期への移行に時間がかかり、だらだらと体温が上がっていくときは排卵障害の可能性があります。おりものの量も少ないときは、卵胞の成長が充分ではないので、低温期の「陰」を補う漢方薬が使われます。また、ストレスや月経前症候群(PMS)の症状があるときは、「気」の流れを良くする漢方薬と併用します。 |