『昭和堂薬局』

　男性不妊症とは、夫婦生活２年以上で避妊せずに女性に異常はなく妊娠できないことを指します。
　WHO（世界保健機構）によると、不妊症の7,273カップルの調査では、不妊症の原因は41％が女性のみ、24％が男女ともに、24％が男性のみ、11％が原因不明で、約半分に男性に原因があります。

　精子は精巣の精細管内で精原細胞から分化・形成されます。この過程には76日間を要し、下垂体から分泌された卵胞刺激ホルモン（FSH）が精巣セルトリ細胞を刺激し精子形成を促進します。

精子機能障害
精嚢炎・前立腺炎・精巣上体炎
造精機能障害
・染色体異常
・視床下部―下垂体障害
腫瘍、手術、放射線治療、外傷、先天性疾患により下垂体からのゴナドトロピン分泌が低下し精巣のテストステロン分泌能、精子形成能障害が障害される。
・精索静脈瘤
・薬剤による造精機能障害
・ムンプス精巣炎
思春期以降の流行性耳下腺炎（おたふく風邪）感染は14％～35％で精巣炎を併発する。
・突発性造精機能障害
　原因不明
・精子無力症
　抗精子抗体により受精が障害される。精路感染症や突発性による膿精液症も精子運動率低下の原因になる。
・奇形精子症
・その他
　停留精子、精巣捻転症、精巣外傷、精巣への放射線照射、発熱により造精機能が障害される。
精路の通過障害
射精障害
男性不妊の検査と基準値
検査項目　　　　　　　　妊娠可能最低条件　　　　中医学用語
精液量　　　　　　　 　　　2.0ml以上　　　 　　　　　精液減少症
精子濃度　　　　　　　　　2000万/ml以上　 　　 　乏精子症
精子運動率　　　　　　 　前進運動50％以上　　 精子無力症
高速運動　　　　　　　　　25％以上
正常形態精子 　 　　　　30％以上　　　　　　　　 奇形精子症
精子生存率　　　　 　　　75％以上　　　　　　 　　精子死滅症
白血球数　　　　　　　　　100万/ml未満　　 　 　 膿精子症
抗精子抗体　　　　　 　　凝集精子50％未満　 　免疫学的不妊

（1）精液減少症と乏精子症
精液減少症
1回の精液量が2ｍｌ以下で、精液過少によって妊娠できないこと
乏精子症
1回の精子濃度が2000万/ｍｌ以下で、精子数過少により妊娠できないこと
腎気不足
精力減退、足腰の無力、めまい、耳鳴、頻尿、倦怠感
治則：補腎益気、生精
その他に気血両虚・湿熱・お血
（2）精子無力症
射精後60分以内で、前進運動精子は50％以下、あるいは高速直進精子25％以下で活動精子過少により妊娠できないこと
命門火衰
性欲減退、ＥＤ，足腰の無力、寒がり、冷え症、顔色が白い、夜間尿
治則：温補命門、補腎助精
その他腎精不足・気血両虚・湿熱・気滞お血
（3）奇形精子
形態正常精子は30％以下で、正常形態精子過少により妊娠できない
陰虚火旺
めまい、耳鳴、胸苦しく、不眠、手足のほてり、寝汗、口喉の渇き、尿の色が黄色
治則：補腎益精、滋陰降火
その他腎陽虚、湿熱
（4）膿精液（精液感染）
精液の白血球数が100万個／ml以上で、それによって妊娠できない
前立腺炎や精嚢炎、精巣上体炎などの生殖器の炎症反応によって膿精液を引き起こす。
湿熱
頻尿、排尿痛、便秘、睾丸の晴れ、陰嚢湿疹
治則：清熱、排膿解毒
その他陰虚火旺
（5）精子死滅症
精子生存率が75％以下で妊娠できない
原因不明ですが、精漿の質量と関係がある
精力減退、性欲低下、射精無力、早漏、足腰の無力、めまい、耳鳴
治則：補益腎気
その他腎陽虚、陰虚火旺、肝鬱、痰湿
（6）抗精子抗体（免疫学的不妊） 
精液検査は抗精子抗体陽性
原因不明で、輸精管障害や前立腺炎、睾丸炎、副睾丸炎、精嚢炎などと関係している。
腎陰虚兼清熱利湿熱
めまい、耳鳴、胸苦しく、不眠、手足のほてり、寝汗、口喉の渇き、尿の色が黄色、便秘
治法：清熱利湿、滋陰補腎

　自分の身体はもちろん、これから自分たちの遺伝子を分け与えた子供をつくろうとしているときに生活習慣、特に生活のリズムがバラバラだったり、忙しいからといって食事をおろそかにしてはいけません。”いただきます”は命をいただくことです。インスタント食品やスナック菓子、加工食品が命をいただくことになるのでしょうか…
　店頭で子宝相談を受けていても、子宝相談をやっている仲間に聞いても不妊症は科学的なこと以外に大きな力が働いているように感じる時があります。それは夫婦仲なのか、ちょっとした自分たちの身体に対する配慮なのか、解りませんが、誰もが健康な夫婦であれば子供はできると思っているでしょう。しかし実際には多くのご夫婦が不妊で悩んでいることを考えると、そのギャップは大きいようです。目に見えない力を自分たちのものにするためにも生活習慣や食生活をもう一度見つめ直し、自分たち夫婦の楽しい人生を手に入れましょう。