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精子側から見た受精

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受精は精子と卵子が卵管膨大部で成立します。この受精に至るプロセスは精密に調整された神秘的な現象です。
今回は、この受精という神秘的な現象を精子の側から見ていきます。

 

 精子の形成は、精巣において脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモンによって開始されます。この分裂を開始する精原細胞はほぼ一生、細胞分裂により供給されます。ここが卵胞と違い男性がいくつになっても妊娠能力があるところです。精原細胞は第1・第2減数分裂を経て半数体の遺伝物質DNAを持つ円形精子細胞になります。ここで遺伝的多様性が形成され、次世代に莫大な組み合わせの遺伝子を伝えることが可能となります。円形精子細胞は受精に適した形態変化、すなわち核の凝縮、先体や鞭毛の形成などを経て精子となります。精巣精子は、本来は充分な運動能力や卵子への進入能力をまだ持っていません。すなわち精子は精巣で形成された後、精巣上体を移動する過程で機能的成熟を果たします。

 

 射出された精子あるいは精巣上体精子は、充分な運動性を持っていても直ちに卵子に進入することはできません。通常精子は女性生殖路を移動してはじめて卵子と出会うので、この過程で受精能を獲得する仕組みを備えています。受精能獲得は精子にプログラムされた一連の生化学反応です。精子細胞内での反応は詳しくはわかっていない部分がありますが、受精能獲得は形態変化ではとらえられない受精に向けての機能変化と考えられています。この変化として精子の運動性(鞭毛の大きな振幅と非対称性)の変化があります。この運動は、透明帯(卵母細胞の細胞膜を取り囲む糖タンパク質)進入において物理的推進力となると考えられています。

 

 精子の受精に向けての形態変化としては、受精能獲得に続く先体反応です。これは卵子への進入に必須の反応で、精子細胞膜と先体外膜が複数の部位で膜融合を起こし先体に含まれる酵素などが放出されます。それによって、透明帯に自らが通過できる狭い通路を形成しながら前進し囲卵腔に達します。精子は囲卵腔に到達すると運動を停止し、卵子の微絨毛により卵子細胞内に取り込まれます。この時、細胞膜の融合が起こります。通常卵管膨大部には複数の精子が到達するので、複数の精子が卵子の細胞膜と融合する可能性が生じる。余剰の精子は表層反応(または透明帯反応)により透明帯で拒絶されます。次に卵子細胞質内に取り込まれた精子は、頭部が膨潤して膨化精子頭部を形成します。膨化精子頭部は雄性前核となり、卵子から発生した雌性前核と融合して最終的な受精の成立となります。

 

 このように精子は精巣で造られただけでは受精することが出来ず男性の体から女性の身体を進んでいくことで、変化していき最終的に受精することが出来るのです。このメカニズムを見ただけでも緻密に制御されていて、なんと神秘的なんでしょうか。
この精子側から見た受精だけでも、これだけ複雑に制御されているため、ちょっとしたことでなかなか妊娠しないこともわかる気がしますよね!
何気なくやっている生活習慣や食生活を見直してみることも重要なんですよ!


昭和堂薬局 | 2015年2月18日

 

「濃いルーほど効く カレーとアルツハイマーの深~い関係」、この新聞記事ってホント?

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 ある新聞記事に「カレーを食べるとボケない」という記事が掲載されました。

 この記事では、「カレーを食べればボケません。少なくともボケの進行を抑えることはできそうです。そもそもカレーが注目されたのは、インド人のアルツハイマー病の有病率の低さです。米ピッツバーグ大学の研究チームがインドと米ペンシルベニア州に住む高齢者(70~79歳)の有病率を調べたところ、インド人は米国人の1/4しかなかったのです。」と書かれています。これは疫学的データであり正しいかもしれません。

 

 しかし、このあとに「辛口だろうが甘口だろうが関係ありません。ポークカレーやビーフカレーの違いもない。アルツハイマー病に効果があるとされるのは、カレーを黄色くするウコン。そこに含まれるクルクミンなのです。ただウコンには大きく分けて秋ウコン(ターメリック)、春ウコン(キョウオウ)、紫ウコン(ガジュツ)があります。クルクミンの含有量が多いのは秋ウコンで春ウコンは少ない。市販のカレールーを買うなら、成分表にターメリックと書かれたものを選ぶといいでしょう」と述べています。

ここで少し考えてみましょう。インドの人達は確かにカレーを食べていると思います。しかしカレールーを使うのでしょうか?おそらく様々な香辛料からカレーを作っているはずです。カレールーからは作っていないでしょう。市販のカレールーの成分表示を見て下さい。パームオイルと書いてあるはずです。

 

 パームオイルはトランス脂肪酸を含むマーガリンやショートニングの原料として使われています。しかしこのオイルの組成は飽和脂肪酸と一価の不飽和脂肪酸がほとんどで、問題になりそうなω-6系の不飽和脂肪酸は10%程度です。これを見るとそれほど問題にはならないように思いますが、炎症が関わる病気を患っている方が食事により敏感に痛みを感じてしまう場合があり、リウマチの方がカレールーから作ったカレーを食べて痛みが強くなることを経験しています。加工に使われたパームオイルは、炎症を悪化させるトランス脂肪酸が多く含まれているのかもしれません、アルツハイマーは炎症が関係している事が云われており、市販のカレールーから作ったカレーは炎症を悪化させる可能性があります。

 

 この様にたとえ新聞記事であっても記事の内容をしっかり吟味しなくてはならないことが解ると思います。もし、この記事をうのみにしてしまいカレールーから作ったカレーを毎日食べてしまったら、アルツハイマーのリスクが上がってしまう可能性があるのです。

 

 最近はインターネットやSNSが発達し巷には情報が溢れています。私達はこれらの情報に振り回され、そこで言われたものを信じて、その商品を買ってしまいがちです。しかし、その情報をきちんと読み解くとカレールーから作ったカレーを食べるのではなく、カレー粉から作ったカレーを食べるともしかするとアルツハイマーが予防できるかも知れないということなのです。この真実がどこかで歪曲したり、“クルクミン”という単語だけを見てしまうことで、この様なことが起こるのだと思います。

間違った情報に振り回されず、きちんとした真実を知りたいものです。


昭和堂薬局 | 2015年2月5日

 

また、今年もアレルギーの季節が近づいてきました。

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 花粉症が大きく話題になる季節が近づいてきました。花粉症でお悩みの方々にとっては嫌な時期ではないでしょうか?
 花粉症をはじめとするアレルギー疾患は、いまだに対症療法しかなく根本的な治療法が見出されていません。
 しかし免疫に関しての基礎研究は、この数年で画期的に進歩してきているのも事実です。免疫反応には、自然免疫、獲得免疫の二つがあります。
 

 自然免疫は、私達の体に花粉やハウスダストといった異物が入ってきた時、最初に対処する免疫反応で、この反応を担当する細胞としてマクロファージや樹状細胞があります。これらは、体内に入ってきた異物(抗原・アレルゲン)を獲得免疫系細胞(T細胞)に提示します。抗原を提示されたT細胞はこの抗原に対し免疫反応を起こします。
 簡単に免疫反応を述べると、花粉症の場合Th2細胞が抗体産生細胞であるB細胞に指令を出しIgE抗体を産生させて対応します。これによりマスト細胞などが動員されてケミカルメディエーターという物質が放出されてアレルギー反応が起こります。
 しかし実際、身体の中ではものすごく複雑な反応が起こっています。例えば、IgE抗体産生もTh2細胞だけでなくTfh細胞も関係している可能性があり、獲得免疫系細胞が動き出す前に、自然リンパ球なるものが存在することも解ってきています。(自然リンパ球と獲得免疫系のT細胞も関係性の詳細については、まだ解っていないのですが…)
この様に、部分的には劇的に進歩している免疫ですが、まだ解らないことが多く残されていて根本的な対策が見出されていないのです。
 

 そのような中、あらゆる病気に免疫が関わり“慢性炎症”という状態が病気を誘発していることも解ってきています。この“慢性炎症”は、肥満や糖尿病などの生活習慣病や自己免疫疾患、アレルギー、がん、認知症などあらゆる病気に関係しています。
 しかし、これらの病気の根本的な治療法が見出されていないのも事実です。
 最近の研究から解っている事の中でどんな事をすればこの“慢性炎症”を鎮めることができるのでしょうか?

 

 免疫学の専門書等を読んでいると、私達が日常生活で行うことで慢性炎症を鎮める可能性があることとして、腸内環境の改善と炎症を抑制する脂肪酸(油)の摂取ではないかと思われます。
 腸内細菌がT細胞を誘導していると言われています。腸内細菌の中で善玉菌である乳酸菌はTh1とTh2のバランスに関係しており、クロストリジア系の細菌がTh17細胞(自己免疫疾患に関係するT細胞)を誘導しています。またセグメント細胞が抑制能の強いTreg細胞を誘導していることが解っています。
 また、免疫が動くことにより良きにつけ悪しきにつけ炎症が起こりますが、これを終息させるためにαリノレン酸(ω3系脂肪酸)系が炎症を抑制し、免疫を終息させていきます。

 

 これらのことから、私達ができることは発酵食品の積極的な摂取と抑制系の脂肪酸であるシソ油や亜麻仁油、魚油のEPAなどの積極的な摂取です。日本人は伝統的な発酵食品や魚を多く食べてきました。しかし、現代の日本の食卓は欧米食が多くなり、それに伴い炎症を促進する脂肪酸(油)である大豆油やコーン油などの油を多く摂るようになり、発酵食品が敬遠され、その発酵食品として販売されているものも品質を簡単に維持するために菌を殺し保存料を入れて出荷しています。
 本当の意味での発酵食品ではなくなってきているのです。

 

 これらの事を解決していくには食生活の見直しが必要だと私個人は思います。自分たちが毎日食べるものですから、もう一度見直してみましょう。病気を予防する方法が見えてくると思います。
 どうしても食事の改善が難しい場合は、食に繋がる様な健康食品の力を借りるのも一つの方法でしょう。
 食事や生活環境を見直し、花粉の季節を元気に乗り切りましょう。あなたに合った改善方法を私達と一緒に考えてみませんか?ご相談をお待ちしております。


昭和堂薬局 | 2015年1月7日


横浜ポルタ内にある漢方薬局。あなたの健康な体を取り戻すお手伝いを致します。