『昭和堂薬局』

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宿便はもう死語のはず

 昔、{宿便」と言って腸壁に便がこびりついているみたいなことを言っていましたが、今ではそのような物はないことがわかっています。

 

 内視鏡で見ればすぐにわかりますよね。

 

 しかし、最近、SNSで「宿便」を目にするようになりました。

 

 死語じゃなかったんですか?

 

 腸、特に大腸は脹の内皮細胞(腸壁)はむき出しにはなっておらず、ムチン層に囲われています。食べ物などが腸壁に接することはないんです。

 

 ネットで調べると丁寧に内視鏡の画像で解説しているところもあります。

 

 滞留便はあるらしいですが、便が溜まった状態で、ほっておくと腸閉塞などを起こしてしまう可能性がある状態で危険な状態です。いわゆる「宿便」とは違います。

 

 腸の不調は漢方薬でもいいんですが、腸活をしてみることをお勧めします。

 

 現代人は、腸内細菌叢の多様性も少なく、食物繊維をあまりとらない傾向になります。

 

 腸の環境を整えて、腸内細菌が食物繊維からつくる短鎖脂肪酸をしっかり作ることにより、肥満防止や免疫力アップなどにつながります。

 

 宿便かもっと思う方は、腸活にチャレンジしてみては?
(宿便はありませんけど…)


昭和堂薬局 | 2025年6月5日

 

良い体脂肪と悪い体脂肪

 太るって健康に悪いイメージですよね。

 

 太った人たちの中で、BMI(ボディマスインディックス)が高いにもかかわらず血液検査などで問題がない人もいます。その人達は若いころからBMIが高く、値の変動が少ない人なんではないかと考えます。(皮下脂肪が多い人では)

 

 中年以降で太ってくる人は、白色脂肪細胞(皮下や腹部の臓器の周囲など)に脂肪を蓄えるタイプです。

 

 白色脂肪組織は、内分泌臓器です。健康な脂肪組織は身体を守るアディポネクチンを分泌していますが、肥満の脂肪組織では炎症性物質を分泌することに加えて、溜めきれない脂肪を他の肝臓や心臓、膵臓などに蓄積することが問題で、それが生活習慣病(糖尿病などの代謝疾患、心血管系疾患)に繋がっていきます。

 

 不健康ではない肥満の人は、褐色脂肪細胞に脂肪を蓄えているため、白色脂肪細胞は健康的な為に、生活習慣病になるリスクが少ないんです。(そして痩せにくい)

 

 これに対して、不健康な肥満の方は、食事の内容で体重が変動しやすいです。

 

 いい意味で減らしやすいんです。

 

 チャレンジしてみてはいかがですか?


昭和堂薬局 | 2025年5月18日

 

店主の独り言 ~発達障害について~

 自閉症・情緒障害特別支援学級に在籍する児童数は、平成19年以降、毎年約6千人ずつ増えているそうです。

 

 いつごろから、ADHDやLDなどが言われるようになったんだろう?自閉症はあったと思います。(調べてみたら、1987年に発達障害という言葉がアメリカから入ってきたようです。)

 

 意外に古いんですね。私が大学卒業して数年後、病院勤務してましたから知っててもよさそうですが、あまり言われていなかったんですかね。(21世紀に入ってからかと思っていました)

 

 世間で言われるようになったのは、ここ20年とかですかね。それ以前は、症状が強く出ている人以外は、個性だったんだと思います。

 

 原因も遺伝的要素が強いと言ってみたり、環境要因が強いと言ってみたり様々。

 

 何が原因でも、診断されていても、まだ診断されていなくても、その人の状態がよく、本人の生活に支障がなければ、わざわざ病名を付けなくてもいいのかなぁと思ったりします。

 

 自閉スペクトラム症では、消化器症状があるケースが多く、腸内細菌叢などが研究されています。

 

 どうすれば治るか結論は出ていませんが、腸活でいい状態に出来ればいいんですけど…

 

 ASDの人は、こだわりが強いので、漢方薬などを飲んでもらうのが大変なんですが、飲むことで生活の質が変わるとすれば、飲んでみたらいいんだと思います。

 

 腸活してみたら如何ですか。


昭和堂薬局 | 2025年5月7日

 

「腸活」って、重要なんですよ!

 太る仕組みは、腸内環境にありました。

 

 以前から、このブログでお話ししてきた通り、太る人はその人の腸内細菌叢が食べ物の吸収を助け、痩せていたり、普通体重の人たちよりも糞便中に出てくるカロリーが少ない事がわかっています。

 

 では、太ってしまうと何がいけないんでしょうか?(見た目だけの問題ではないんですよ)

 

 まだ若いうちは、太っても皮下脂肪になったりするので問題なかったりするんですが、だんだん年齢を重ねて、40歳を超えたあたりから、お腹周りに脂肪がつくようになります。

 

 これが所謂、内臓脂肪です。

 

 内臓脂肪とは、白色脂肪細胞に脂肪を貯めることです。

 

 その白色脂肪細胞は、健康を保とうとするホルモン「アデポネクチン」を分泌しているのです。

 

 しかし、白色脂肪細胞に脂肪をたくさん蓄えてしまうと、アデポネクチンの分泌が減り、炎症性物質のTNF-αなどを分泌する様になってしまいます。これが長く続くと生活習慣病に繋がっていくのです。

 

 腸内細菌のことは、分析技術が進歩して以来、どんな菌がその人の腸にいるのか調べることができる様になり、飛躍的に解明されつつあります。

 

 そして、腸内環境とどんな疾患が関係があるのかもわかってきて、便秘や下痢ばかりか、メンタルや不妊など、以前はあまり関係ないと思われていた疾患

 

 まで、腸内環境が影響していることがわかってきているのです。

 

 腸内環境を見直すことで、疾患の根本原因を改善できたらいいですよね。


昭和堂薬局 | 2025年3月2日

 

やっぱり、暖かいと調子いい

 2月に入り、少しづつ暖かい日が出て来ました。

 

 今日(18日)からまた寒くなってきましたが、先週から昨日までは暖かく春の陽気でした。すると、むくみがとんどん減っていって、体重で1.5kg減ったのでだいぶ楽になりました。(1.5kgもむくみがあったとは思っていなかったのでびっくりです。)

 

 これからもう少し良くなってきたら、減ってしまった筋肉を増やしたいですねぇ。今回来る寒波でまた悪くならなければ、来週の診察から癌の治療再開です。(大きくなったなければいいんですが…)

 

 インライタの内服からスタートかと思います。

 

 泌尿器科のドクターも、循環器内科のドクターも、今回の心不全が起こったのは薬の副作用だとは考えていないようです。ただ、確信があるわけではないので、慎重に治療は再開する様ですが…(少し量を減らす様です。)

 

 私としては、全く不安がないわけでは無いのですが、癌の対する対処が漢方薬だけということも不安なので、治療が始まることは嬉しいんです。

 

 今の所、大分元気に働けていますので、皆様のご相談もスムーズに行くと思いますので、店頭にてお待ちいておりますので、ご来店いただけると嬉しいです。

 

 来月から、腸活系のグループに入れてもらって、腸を健康にすることによってウエイトコントロールや生活習慣病、メンタル疾患、免疫疾患など対応していくノウハウを学びたいと思っています。

 

 このコラムにも腸内環境のことは、だいぶ昔から書いていたので、知識として知らないわけではありませんし、今までも腸活をしてこなかった訳ではないのですが、このグループの中心になっている人が、20年ぐらい前に当店で修行をしていた人で、私より年齢的にも1周り半下の年齢なので、若い方達に刺激を受けつつ頑張ってみようかと思っています。

 

 もし、腸活に興味がありましたら、ご来店お待ちしております。


昭和堂薬局 | 2025年2月18日

 

今、注目されている慢性子宮内膜炎

 今、不育症や着床障害の原因として慢性子宮内膜炎や子宮内フローラが注目されています。
 しかし、まだ慢性子宮内膜炎や子宮内フローラ検査の診断基準は定まっていないのが現状です。盛んに研究されていることは事実ですが、子宮内フローラが正常な症例と異常な症例で妊娠率に有意差があったとする研究も今のところ少ないようです。

 

 着床するために子宮内の免疫細胞が関係していることは事実です。そのことから考えると、子宮内フローラが着床のために何かをしていることも事実なのではないかと思います。

 

 そのことから考えると、ご夫婦で腸内環境を整える食生活や生活習慣、或いはプロバイオティクスやプレバイオティクスを飲んでみるのもいいのではないかと考えます。

 

 実際に、ご夫婦の健康面から見てみると、腸内細菌叢がいい状態が、将来の病気の予防にもなるのですから、やって損はないはずです。

 

 また、生まれてくる子供の腸内環境も意識していただきたいです。子供の腸内細菌叢は、胎児期から生後2歳くらいまでに確立します。また、お母さんからの影響が大きく、出産方法(自然分娩か帝王切開)や母乳か人工乳かなどいろいろな影響を受けます。その腸内細菌叢がいい状態だと健康な子ともに成長していくでしょう。

 

 子供の腸内細菌叢が、あまり良くないとアレルギー疾患や免疫系、炎症性腸疾患などのリスクが高まります。

 

 あまり、脅かしたくはないのですが、腸内細菌叢が脳の発達に重要なことが言われています。腸内細菌叢の異常と自閉症スペクトラムの関係が研究されています。

 

 自分達の未来のために、少し腸内環境のことも気にかけていただきたいと思います。


昭和堂薬局 | 2023年10月2日

 

貴方の便はどのタイプ?

 大便は健康のバロメーターです。腸の環境の変化が便の状態に現れるのです。食べた物によって便が変化することを経験したことがありませんか?
 大便の大部分は水分で健康な便で80%を占めています。その水分を除いた3分の1が食べカス、3分の1が新陳代謝によってはがれた腸粘膜、残り3分の1が腸内細菌です。そして食べた物やストレスなどで腸内環境が変化し、その腸内環境が大便の状態として現れるのです。
 戦後の日本人は食物繊維を1日およそ27gも摂取していました。しかし、今の日本人はその半分以下の12gしか摂取できていません。その結果大便の量が減ってしまっています。量が減っただけでなく腸内細菌にも変化を与え、それまであまりなかった病気が増えてきています。

 

 では、どんな大便が良いのでしょうか?
 大便の色は茶色でやや黄色がかっています。黄色は胆汁の色で、脂質が多い肉などを多く食べると胆汁が多く出て腸内がアルカリ性に傾き褐色になり、腸内細菌の悪玉菌が増えます。穀物、豆類、野菜を多く食べると酸性に傾き大便は黄色くなります。食物繊維が多くなると大便は粘り気がなくボソボソとほぐれやすくなります。こんな感じが良い便で、黒っぽくネバネバした便は良くない便です。
 大便の色が変化すると大便の臭いやガスの臭いも変わります。それは食べた物で腸内細菌が変化するためです。腸内細菌には善玉菌と悪玉菌、それらのどちらでもない菌(日和見菌)がいます。肉や加工食品などを多く摂ると悪玉菌が増えて大便やガスが臭くなり粘りが多い黒っぽい便になります。
じゃあ、悪玉菌を無くせばいいではと思うかもしれませんが、そんな簡単なものではありません。腸内細菌は善玉菌や悪玉菌のバランスが大切なのです。善玉、悪玉というネーミングが体に必要なものと不必要なものというイメージになりますが、悪玉菌も体には必要なのです。
 また、肉などで悪玉菌が増え、この結果腸内環境が悪くなるのであれば肉を食べなければいいのではと思いますが、これも間違いで、食もバランスが大切です。タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラル・食物繊維がバランスよく摂れないと体に必要なものが不足してしまします。
黄金色でバナナのような形の臭わない大便になるように、食のバランスを整えて心身の健康を手に入れましょう。毎日の大便を観察し、その前にどんな物を食べたか考えて下さい。いい便にするための食がきっと見えてきます。
 どうしても早くいい便にしたいという”せっかちな人”は腸内環境を整える健康食品を…

 

 

〇便の硬さや形状から腸の状態を推測するブリスとスケール
タイプ1: 木の実のようなコロコロした固い便(通過しにくく、黒くなることがある)
タイプ2: ソーセージ状ではあるがゴツゴツした固い便
タイプ3: 表面にひび割れのあるソーセージ状(黒くなることもある)
タイプ4: ソーセージやヘビのように滑らかで柔らかい(平均的な便)
タイプ5: 柔らかい小塊で、形がはっきりしている
タイプ6: 小片が混じって周囲がデコボコした泥状の便(下痢気味)
タイプ7: 全体が水様で固形物がない便(下痢)
タイプ1とタイプ2は便秘を示し、タイプ3とタイプ4は水分を多く含まず排便しやすい理想的な便、タイプ5は食物繊維の不足を示し、タイプ6とタイプ7は下痢を示します。
最初の研究では、このスケール(尺度)で調査した集団では、女性ではタイプ1とタイプ2の便が多く、男性ではタイプ5とタイプ6の便が多く見られました。さらに、直腸テネスムス(不完全な排便感)を報告した被験者の80%がタイプ7でした。

画像は、日本中医薬研究会「胃腸は健康の要」ー脾のはなし より

 

 店頭に立っていると、『便秘のお薬ください。』とおっしゃる方が非常に多いです。さらに、その大半の方は『漢方の便秘薬って優しんですよね。』なんておっしゃいます。この言葉をかけられるとすごく不安を覚えます。確かに、当店でお勧めする便秘薬は、お腹が痛くなりにくく、しっかり効いてくれるものをご提案していますが、漢方薬とはいえ、下剤は下剤です。お薬の力で便を出しているにすぎません。
 便秘の原因には、食生活をはじめ生活習慣や社会的ストレスなどが関係しています。これらの要因に長くさらされることで、腸内環境が劣悪化し、腸がうまく働いてくれなくなってしまっているのです。さらに、下剤を使い続けることも、腸がうまく働かなくなる原因となってしまいます。
 『腸の働きって何?排便してくれるとこでしょう?』と思われる方も多いでしょう。確かに、便をつくって排泄するだけなら、下剤を使い続けることでもいいかもしれませんが、腸には他にも重要な役割があります。そのひとつに免疫器官としての役割(腸管免疫)です。人間の免疫力の60%以上が腸管免疫です。腸内環境が悪いということは、免疫のバランスが崩れ、アレルギー(花粉症・アトピー・喘息など)などの免疫疾患を引き起こす可能性が非常に高いといえます。また、抵抗力が落ち、風邪を引きやすくなっている人もいます。
 また腸は、老廃物を排泄するだけでなく、必要な栄養分を消化吸収する器官でもあります。血行が良く、肌のキレイな方は、腸管からの栄養補給がスムーズな方がほとんどです。
 腸を単なるゴミ(老廃物)溜めだと考えて、掃除しないでいると、美肌が得られなくなるだけでなく、腸管内に悪玉菌が増殖して腐敗物質を産生し、それが血液循環に入り込み、血流が悪くなり、血栓ができやすい体質となり、高血圧・動脈硬化や肝機能障害など様々な病気を引き起こしてしまいます。
腸は老廃物の処理だけでなく、私たちの健康維持に大きく関わっている器官です。腸内環境を変えることは可能です。まずは、毎日便通がある方でも、出ている便の状態をしっかり観察して、腸の環境がどんな状態なのかチェックしてみてください。
 目指す便は『臭みがなく黄金色でバナナ状のふわりと浮く便』です。


昭和堂薬局 | 2022年11月1日

 

脂質の摂り方のヒント

 最近、日本人も高脂肪食が多くなって体重増加から病気になってしまう人が多くなってきました。欧米の人ほどの肥満になることはないのですが、日本人は肥満に対する耐性が高くないため、病気になりやすい傾向になります。その脂質の摂り方を工夫することにより、肥満を軽減できるのです。今回は、その工夫のためのお話しをしていきます。

 

 三大栄養素の一つである脂質は、我々人が活動するためのエネルギー、生体膜(細胞膜)の構成成分、生理活性物質の減量など様々な働きを担っています。脂質の主な構成成分である脂肪酸は炭化水素基の長さや二重結合の数や位置によって多くの種類が存在します。また、中性脂肪やコレステロールエステル、リン脂質、糖脂質などの脂質の構成成分になっています。

 

 脂肪酸の中でn-3系多価不飽和脂肪酸やn-6系多価不飽和脂肪酸は、我々人の体内では作ることができず、必須脂肪酸として食事から摂取する必要があります。n-6系多価不飽和脂肪酸であるアラキドン酸やn-3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、シクロオキシゲナーゼ、ポリキシゲナーゼ、シトクロムP450モノオキシゲナーゼなどの酵素により脂質メディエターに代謝されいろいろな働きをしています。

 

 人の体で熱産生をしている組織は、褐色脂肪組織(皮下脂肪)です。この褐色脂肪組織の高い熱産生能は褐色脂肪細胞内のミトコンドリア内膜上に存在する脱共役タンパク質1(UCP1)の機能によります。近年、特定な刺激により白色脂肪組織(内臓脂肪)にもUCP1が発現して高い熱産生能を示すベージュ脂肪細胞がエネルギー代謝に関わっていることが明らかになりました。

 

 これら褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞が担っている代謝機能は、肥満や肥満による代謝異常症の予防や改善の可能性の指標として期待されています。また、食品中の脂肪成分による機能調整機構の存在が明らかになってきています。

 

 動物実験ではありますが、魚油(n-3系多価不飽和脂肪酸)摂取は高脂肪食接種によって誘導される体重増加を抑制し、褐色脂肪組織機能を亢進させることが解ってきました。また、n-3系多価不飽和脂肪酸摂取と褐色脂肪組織機能の関係を検討した研究はないのですが、n-3系多価不飽和脂肪酸や魚油の摂取で体重や体脂肪低下が観察された報告はあるようです。

 

 また、腸内細菌叢による食事からの脂肪酸代謝産物が脂肪組織の熱産生機能を調整していることも報告されています。

 

 メカイズムを詳しく書いてしまうと難しくなるので割愛しますが、n-3系多価不飽和脂肪酸と乳酸菌で肥満の予防や改善ができる可能性があるということです。但し、めちゃめちゃな生活習慣や食生活をしていたらうまくいかないでしょうけれど…


昭和堂薬局 | 2022年7月14日

 

「やすらぎ通信 令和4年 お盆」のコラムを執筆しました。

 新型コロナウイルス感染症が起こり始めて、2年半も経ってしまいました。現在もまだ収束には至っておらず、このままコロナウイルスと共生していかなくてはいけないのかもしれません。

 

 ウイルスや細菌などについてはさまざまの研究がなされていますが、今回は細菌について述べたいと思います。細菌は地球上の生物の1/2~1/3を占めているとされています。それは我々人間の体も例外ではなく、外部環境と接する皮膚や粘膜面には、膨大な数の共生細菌群(常在細菌叢)が定着しています。(下の表に体の各部位のおおよその菌の桁数をまとめてあります)特に大腸は細菌の生育に最適な環境であり、地球上のあらゆる環境中でもとびぬけた高密度で細菌群が棲息(せいそく)するとされています。その数は40兆個以上とされ、宿主の人間の細胞数よりも多いのです。また、細菌の数だけでなく、その多様性が人の健康にどのように影響しているのか。これまで多くの研究報告では、様々な菌の種類がバランスよく存在することがメリットをもたらし、病気になるときにはその多様性が低下することが報告されています。例えば、特定の菌が腸内で増殖すると相対的に菌数が減少します。これは病気の人に多く見られる状態です。一方でさまざまな種類の菌がいると多くのことに対応できる状況になるのです。


表 体の各部位の菌数 

部位 細菌のおおよその桁数
結腸(大腸) 10の14乗
歯垢 10の12乗
回腸(下部小腸) 10の11乗
唾液 10の11乗
皮膚 10の11乗
10の7乗
十二指腸(上部小腸) 10の7乗


 また、環境が改善して感染症が減少してもアレルギー疾患や自己免疫疾患増加しているのは、環境中の細菌が減少したことに起因されるという「衛生仮説」が存在し、そのことを科学的に証明する研究が盛んにおこなわれています。この衛生的な環境が現代病を増加させるとも言われる中、我々はこのコロナ禍において手指の消毒やうがいを行い、更には自分達の生活圏を消毒し身の周りの菌を減らしてきました。このことが後になって私たちの体にどんな影響を及ぼすのかは、計り知れないところです。(コロナ禍の影響は、この細菌のことのみではないのですが…)

 

人の疾患と腸内細菌叢
 基本的に健康であれば腸内細菌叢の頑健性は保たれています。一方で腸内細菌叢のバランスが乱れる要因はさまざまなものが知られています。

 

・偏った食事
 長期的な食習慣がその人の腸内細菌叢のタイプを決定しています。また、短期的にも極端に食事が変化すると、腸内細菌叢は変化することがわかっています。
・ストレス
 脳と腸は迷走神経でつながっており、脳がストレスを感知すると腸の蠕動運動が影響を受け、その結果腸内環境が変動し、細菌叢が変化すると言われています。また、ストレスによって副腎資質ホルモン(ステロイドホルモン)が消化管に分泌されて細菌叢を変化させているとも言われています。
・その他
 その他には、生活環境(田舎で暮らしているか都会で暮らしているか、これは細菌が多い環境か少ない環境がということです。食事と一緒に細菌が入ってきます。)、抗生物質などの薬の摂取、加齢などが知られています。

 

腸内細菌叢がもたらす疾患
 腸管は粘膜免疫の中心です。腸内細菌叢がその人の粘膜免疫に影響していることは多くの研究で分かってきています。その中で衝撃的であった研究は、腸内細菌叢が肥満にも関係する報告でした。それは太った人・痩せた人由来の細菌叢を無菌マウスにそれぞれ移植し、その後同じ食餌条件下で太った人由来の細菌叢を移植したマウスの方が太ることを示したものでした。また、この研究では太る原因は、太ったマウスは腸内細菌叢による食餌成分の代謝により栄養素がより多く供給されることで太ってしまうことが報告されています。
 この研究をきっかけに、腸内細菌叢と消化管疾患や代謝疾患、がん、免疫疾患、精神疾患、循環器疾患など多くの病気との関連が多数報告されています。

 

腸内細菌叢をどのように制御するのか
 健康を維持していく為に、いかにして腸内細菌叢をコントロールすればいいのか。基礎研究においての代表的な制御方法はプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌)やプレバイオティクス(オリゴ糖や食物繊維)の摂取と便移植法です。(便移植法はまだ通常の治療法にはなっていません。)
 数年前から多くの食品メーカーからいろいろなヨーグルトが発売され、ブームとなりましたが、これも腸内細菌叢が、病気に大きく関係していると分かった結果です。私たち日本人が腸内細菌叢を維持していくには、日本の伝統的な発酵食品を摂ることが一番いいのではないか、と私は考えています。長い時間をかけて伝統的な酵母菌や麹菌が、我々の腸内細菌叢を維持し健康を支えてきたのですから。だからヨーグルトではないのかなぁと…、と思ったりもします。

 

日本人には日本人特有な腸内細菌叢のタイプがあるのです。
 多くの日本人の腸内細菌を調べた研究では、いくつかのタイプに分類できました。
その中で病気になりやすいタイプの腸内細菌叢は、高たんぱく・高脂肪食(西洋食)を好んで食べている習慣がある人たちです。一般的に良い細菌叢の食事は、低たんぱく・低脂肪・高食物繊維の食生活でした。
 人間の3大栄養素であるタンパク質・脂肪・炭水化物は食生活にはある程度必要なのですが、偏ってしまうのはよくないことです。特に日本人は伝統的に食物繊維が多い食生活をしてきました。また、日本食は油の量が少ないヘルシーな食事です。いつもの食生活を見直し、その中に日本の伝統的な発酵食品をプラスする工夫をされたら宜しいのではないでしょうか。
私が子供の頃には、母親が自宅で白菜漬けやぬか漬けを作っていました。この夏、ひと手間かけてトライしてみてはいかがですか。添加物や菌を殺して出荷しているような工場で作られた漬物とは全然違うはずですよ。

 

主な発酵食品

豆類   : 納豆 醤油 味噌 豆板醤 豆腐ようなど

魚介類  : 鰹節 塩辛 くさや 魚醤 アンチョビ 酒盗など

肉類   : 生ハム サラミなど

乳製品  : チーズ ヨーグルト サワークリームなど

野菜・果物: ぬか漬け キムチ ピクルス ザーサイ メンマ かんずりなど

穀物   : 甘酒 米酢 黒酢 みりんなど

 

 日本で手に入る発酵食品です。この中から自分に合った発酵食品をいくつかとっていただけるといいと思います。


昭和堂薬局 | 2022年6月29日

 

子宮内細菌叢(子宮内フローラ)

 我々人間のさまざまな部位で常在細菌が注目されています。われわれ人間は細菌と共に生きています。常在細菌に助けられながら生活していると言ってもいいくらいです。
 以前は、子宮は無菌の状態だと考えられていました。しかし、1980年代に子宮内において細菌の存在を示唆する報告があり、その後、子宮内細菌叢の存在を裏付ける報告がなされました。
 近年は、細菌の解析技術の進歩により、子宮内常在菌の存在が明らかになりました。

 

 子宮内細菌叢の関する報告は多くありませんが、ラクトバチルス属が優位な状態が着床・妊娠維持に有益であることが言われています。
従来から皮膚・腸・口腔内などの細菌叢はよく知られています。また、その細菌叢の異常が糖尿病などの生活習慣病、アレルギーなどの疾患との関連が明らかにされています。膣内においてもその存在がよく知られており、その乱れが細菌性膣炎などお引き起こすとされています。

 

 子宮内細菌叢に関してはほとんどわかっていないのが現状ですが、構造的に腸と同じように、子宮内膜をムチン層が覆っているなどの共通点もあり、子宮内細菌がないかをしていることは明らかではないかと思われます。しかし、子宮内細菌叢がどのような状態が妊娠成立・維持に適しているのかはわかっていません。

 

 疫学調査では、腸内細菌叢が悪い状態になると妊娠中毒症や流産の原因になるという報告があります。また、同一人物の腸内細菌叢と膣内細菌叢は似ていると言われています。構造的に膣と子宮内細菌叢は似ていそうです。妊活中の方は腸内細菌叢をよくするようなことをしておくといいのかのしれませんね。


昭和堂薬局 | 2021年10月12日


横浜ポルタ内にある漢方薬局。あなたの健康な体を取り戻すお手伝いを致します。