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子宮内膜症と不妊

 不妊に悩む女性の多くで子宮内膜症を患っている方がいらっしゃいます。子宮内膜症があると何故不妊症になってしまう方が多いのでしょうか?
 最近、少しずつその原因がわかってきました。

 

 子宮内膜症があると、子宮への卵子の移動を妨げ、また子宮内膜症で生じた炎症によって卵胞の質や量を低下させることがあるようです。また、炎症によって生じた炎症性サイトカインの影響で、卵管を通る精子の運動性が低下し、卵子や胚が傷つくこともあるようです。

 

 ホルモンの分泌や感受性にも問題が生じてきます。通常、排卵後子宮壁のエストロゲン受容体が減って着床の準備をします。そしてプロゲステロンが増えて子宮は着床に備えます。しかし、子宮内膜症があるとプロゲステロン抵抗性になり、着床しにくくなってたり、早産や流産のリスクを高めたりします。

 

 更に子宮には細菌叢がありますが、この細菌叢のバランスが乱れます。多くの女性は乳酸菌が優位で、これが着床や胚の成長を助けていると考えられています。推測の段階ですが、炎症によって乳酸菌が減ってしまうことにより細菌叢のバランスが崩れているため不妊になっている可能性もあるようです。

 

 といっても、悪い話ばかりではなく子宮内膜症の方の体外受精の成功率は高いようで、妊娠中はホルモンバランスが変わり症状も軽くなります。

 

 子宮内膜症の原因は現在もわかっていません。有力な説は「逆行性月経」です。それは月経時に子宮由来の細胞を含む経血が卵管を逆流するという現象があり、通常は免疫系の細胞によって排除されるものが、何らかの原因により骨盤内臓器や腹腔内に付着したりするというものです。

 

 また、子宮内膜症の治療も確立したものはなく、唯一可能性があるものは外科的な除去だけです。

 

 前回のコラムで中医学的な子宮内膜症のとらえ方をお話ししています。参考にしてみてください。


昭和堂薬局 | 2018年12月3日

 

相談数が多い子宮筋腫、卵巣嚢腫と中医学

 中医学では、腹部腫瘤のすべてを癥瘕(ちょうか)と呼ばれています。その癥瘕には、西洋医学でいう子宮筋腫、子宮内膜症、骨盤内炎症性腫瘤、卵巣嚢腫などが該当します。

 

 癥とは、征(触れることができる)であり形があり堅硬で移動性がないものです。瘕とは、假(はっきりと触れない)であり、形が聚まったり散らばったりするものです。大雑把にいうと癥は血が集まったもので、瘕は気が集まったものと解釈しますが、臨床的には明確に区別ができないので癥瘕として扱い、問診で判断していきます。多くのケースは両方があると判断することが多いと思います。

 

 19世紀後半から上海で活躍した三大大家のうちの一人、朱氏婦人科の書籍では、病因を4つに分けています。
① 産後に風寒を感受したもの
② 月経時に寒邪が入ったもの
③ 寒湿を下焦に感受したもの
④ 産後や月経時に、食事の不摂生や気候の変調があった物
以上の原因から血脈が渋り、経絡が滞り、トンネルが塞がったのであると述べています。

 

 また、中医学の多くの古典でも寒邪の影響だと述べていますが、実際には寒邪の影響と判断されることは、それ程多くないように感じます。

 

 処方的には活血理気薬を中心に使用しますが、形を伴うものであるために破血消瘀薬が必要なケースも多くあります。また、子宮筋腫など腫瘤を消失させることはなかなか難しいことです。一般的には閉経後、筋腫や内膜症などの腫瘤は自然萎縮することが多いようです。

 

 しかし、妊娠希望のケースは月経を整えながら同時に筋腫や嚢腫が邪魔をしないように考慮していきます。


昭和堂薬局 | 2018年11月26日

 

ストレスと不妊

 妊娠を希望する女性にとってストレスが良くないことは皆さん何となく理解していると思います。

一方で現代はストレス社会といわれています。実際ストレスがない人がいるのでしょうか?

ストレスは多種多様なもので、気温が高く暑いと感じたりすることもストレスとなりえます。人によって物事の感じ方や捉え方は様々で、そのストレスによって「ストレス反応」が出るものを、ストレスと呼びます。

 

 ストレス反応が起こると、副腎から副腎皮質ホルモンの一つであるコルチゾールというホルモンが分泌されます。このホルモンを「ストレスホルモン」と呼んでいます。 このコルチゾールの分泌は、脳の下垂体から放出される副腎皮質を刺激するホルモン「副腎皮質刺激ホルモン」によって調節されます。そして、この「副腎皮質刺激ホルモン」は、さらに下垂体の上位にある視床下部から放出される「副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン」によって調節されています。(「視床下部-下垂体―副腎」)

 

 このホルモンの流れ「視床下部―下垂体―副腎」が、女性の生殖器のホルモンの流れ「視床下部―下垂体―卵巣」に影響しているのです。

 

 では、中医学のストレスによる不妊はどうなっているのでしょうか 古書によると、感情が舒暢(じょよう:心をのびのびさせること)されないと肝気が条達(伸びやか)できなくなり、気血の調和が乱れると、衝任(月経に関わる経絡)は互いに滋養できなくなって不妊となる。肝気の鬱滞により血行がスムースでなくなると、月経前に乳房が脹り、月経量が少なくなり、黯色で血塊が混じる。肝鬱のために感情が抑鬱され、鬱が火へ変化すると煩燥して怒りやすくなる。疏泄機能が失調すると月経周期が前後して不安定となる、とされています。

 

 少し難しくなってしまいましたが、精神的ストレスがあると肝がうまく働けず、肝は女性の発育や生殖にかかわりがあり、不妊となってしまうのです。 治療そのものがストレスとなっている場合もあります。 そのような場合、漢方薬を治療の手助けの一端として使用してみてはいかがでしょうか。


昭和堂薬局 | 2018年10月29日

 

出産後1年未満の女性の死因について

 2016年までの2年間で、産後1年までに自殺した妊産婦は全国で少なくとも102人いたと、厚生労働省研究班が5日発表しました。全国規模のこうした調査は初めて。この期間の妊産婦の死因では、がんや心疾患などを上回り、自殺が最も多かったそうです。
 妊産婦は子育てへの不安や生活環境の変化から、精神的に不安定になりやすいとされています。研究班は「産後うつ」などメンタルヘルスの悪化で自殺に至るケースも多いとみて、産科施設や行政の連携といった支援の重要性を指摘しています。

 

 性差医学では、うつ病の有病率は男性の1.5~3倍といわれています。年齢別でみていくと高齢になると男女差が顕著になります。また、マタニティハラスメントや保育園待機児童などの問題も女性が受ける影響です。
メンタルと性差に関しては古くから言われていて、「ヒステリー」という言葉の語源は古代ギリシャ語のhstera(子宮)だそうです。また、妊娠・出産という心身に負担のかかることを経ていることや性差医学の結果からもホルモンの変化が関係している可能性を示唆しています。

 

 東洋医学的に見ていくと、妊娠・出産・授乳により“血”が不足して“心”に血を送れなくなり不安や不眠を招いてしまったことと、生殖にかかわっている“腎”に負担がかかり“心”をコントロールできなくなった可能性があります。
 妊娠中から“血”を補うような漢方薬を飲んでおくと、このようなことが防げます。また、この傾向が出てきてしまった場合には、原因である心血を補い、心を安定させる安心薬が入った処方を中心に服用していくといいと思います。


昭和堂薬局 | 2018年9月19日

 

妊娠の不思議 その2

 科学や画像解析、遺伝子検査などの技術が発達した現在でも、人間の身体はわかっていないことが多くあります。特に生殖系に関しては人権や倫理の問題もあり、よくわかっていないことが多いのです。そこで今回も妊娠の不思議についてお話ししてまいります。

 

 最近、腸内細菌と病気の関係が、様々なところで報告されています。その中でも妊娠・出産による腸内細菌叢の変化について、現在言われていることをお話ししたいと思います。

 

 一般的に、腸内細菌叢の構成異常により微弱な炎症(慢性炎症)が発生、この慢性炎症により体重増加をきたし糖尿病などのリスクが増大していきます。
 しかし、この腸内細菌叢の構成異常が正常な妊婦さんでも起こっていることがわかってきました。妊婦さんにとっての腸内細菌の変化は必要なことであり、正常な妊娠経過や胎児の成長に貢献していると考えられています。

 

 このような妊娠という環境の変化に加え、妊娠中の食事(高脂肪食など)や抗菌剤・抗生物質の使用により母体や胎児の腸内細菌叢がさらに変化することで、炎症が関係する流産や早産の原因になったり、生まれてくる子供の免疫機能にも影響を及ぼし、アレルギーをはじめとする各種の疾患を併発する可能性があります。

 

 これらの結果から、妊婦さんや妊娠を希望している方々は、食事のバランスに気を付けて腸内環境を良い状態を保っている必要があります。自閉症と妊娠時の母体の腸内細菌叢についての報告もされているようです。
 食事のバランスをとる心がけは必要で、特に高脂肪食は腸内細菌叢の構成に乱れを起こすと考えられています。
 わからないことが多い人間の身体です。できることから始めていきましょう。


昭和堂薬局 | 2018年4月26日

 

妊娠の不思議

 妊娠については、謎が多いものの、妊娠についての構造や基本的な発達段階はわかってきています。受精から1週間以内に「栄養膜細胞」という特殊な細胞が胚の表面に現れます。この細胞が胚の存在を母体に知らせ、子宮壁に穴を開け、子宮に入り込みます。子宮に入り込んだ後、この栄養膜細胞は急速に分裂し、放射状に突起を伸ばしていきます。その後、栄養膜細胞から構成される「細胞性栄養膜」の上に融合した細胞層(合胞体性栄養膜)が重なり、これが胎盤の表面になります。胎盤は最終的に、分岐構造によって子宮にくっついた円盤状になります。これらの分岐は受精後2~3週間で支持細胞と血管によって満たされ始め、その後成熟して絨毛膜絨毛と呼ばれる構造になります。

 

 妊娠が順調に進むかどうかは、母体と胎児の境界部分の活動にかかっています。この境界部分が母体から胎児へ酸素、栄養、体液を供給しますが、それが適切に発達して機能するには、胎盤の細胞と子宮、更に母体の免疫系の協調が必要です。

 

 胎盤の発達と機能の詳細はまだ不明な部分が多くあります。大きな謎は、何が分娩を引き起こすのかという疑問です。分娩の時期が来ると休止状態にあった子宮筋が、大きな力で収縮して赤ちゃんと胎盤を押し出します。その時までしっかり子宮とその血管にしっかり結合していた胎盤がどのようにして分離するのだろうか?また、胎盤は通常病原体や毒素をブロックしているのに、いくつかのウイルスや炎症性物質は胎盤を通過し、胎児に達し異常を引き起こすのだろうか?

 

 まだまだ、不思議なことが多い妊娠ではありますが、もしかすると、母体の環境が大きく関係している可能性もあります。妊娠前から、血流を良くしておくこと、腸内環境を良くしておくこと、食生活などは見直しておくことが必要なのでしょうね。


昭和堂薬局 | 2018年4月9日

 

漢方療法推進会中医不妊特別セミナーの終了証を頂きました。

 

 去る12月10日に第6回中医不妊特別セミナーが開催されました。講師で中医師の周軍先生より、修了証書を頂いてきました。今年の2月から6回シリーズで不妊症に対する漢方薬の使い方から養生や周先生の症例などを丁寧にお話ししていただきました。

 

 私自身はこれまで多くの子宝に恵まれない方たちのご相談を受けてきたので、自分では十分知識があると思っていたのですが、新しい発見も多く改めてまだまだ未熟なことを実感しました。

 

 その後、最後ということもあり懇親会が開かれ、たまたま周先生の前の席に座らせてもらい懇親会でも不妊症以外にもがんの対応など、皆さんが日ごろ対応に苦労している質問に丁寧に答えているお話を聞くことができ、大変有意義でした。

 

 このような気さくな先生が身近にいらっしゃることは大変ありがたく幸せなことだと思っております。周先生ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。


昭和堂薬局 | 2017年12月13日

 

子宝のための中医学的養生法

 現代のライフサイクルの変化に伴い、子づくりをする年齢が遅くなるなどによって苦労されているご夫婦に出会います。食の変化やライフスタイルの変化による過剰なダイエット、夜更かしなど、そこまでにしてきたことやもしかするとご本人だけでなく、その親御さんの若いころの生活環境も影響している可能性があります。
しかし、過去をあれこれ言っても始まりませんので、これからどんなことをしていくといいのかを東洋医学的に考えてみたいと思います。

 

 東洋医学的に生殖を主る臓腑は「腎」です。この「腎」の力が旺盛であれば妊娠しやすいのですが、腎の力は28歳ごろをピークに衰えていきます。また、この「腎」の力は個人差が大きく、もって生まれたものや成長過程での生活環境なども影響します。

 

 その他には「肝」や「脾」が関係することが多くあり、血液の流れなども影響があります。前回のコラムで生理時の養生について書きましたが、月経期などに寒邪が入り込んで冷えてしまうこともあるかもしれません。

 

 まずは、生殖に大きくかかわってくる「腎」の養生法についてお話ししたいと思います。
「腎」の五季は「冬」でこれからの季節は「腎」の季節です。寒さも厳しくなる季節ですので冷えてしまうと腎の機能が衰えてしまいますので暖かくしておく必要があります。また、偏食や睡眠不足も腎の力を弱くする可能性があります。

 

 

 

 腎を助ける食べ物としては、鹹味(塩辛い味)です。塩辛いと言っても精製塩の塩化ナトリウムではなく、ミネラル豊富な天然塩です。天然塩には苦汁が入り、苦味は腎と対極にある心を助ける味です。また、お節料理は新年を祝う日本の伝統料理ですが、腎を補う食材がふんだんに使われています。黒豆や田作り、昆布などがその代表です。

 

 最後に、食べ物は自分の体をつくるものです。インスタント食品や加工食品のような化学物質が入ったものでよいのでしょうか?食材から作った本物の食事で自分の身体を作ってあげないと、いい子孫ができないのではと思ってしまいます。


昭和堂薬局 | 2017年11月27日

 

生理の時、気を付けてますか?

 月経は女性特有の生理現象です。女性は月経の時は何かと面倒なことが多いし、生理痛や頭痛など不快な症状も多く、養生なんてと思われるかもしれませんが、自分ではたまたまと思っていることが生理の時に起こっているのです。

 

 漢方相談をしていて感じることは、女性が風邪を引くのは生理中が多く、これは月経中は血室(子宮)が開いているので邪気が侵入しやすく、また月経によって出血すると同時に気も出ていくので体を守る力も落ちているため風邪を引きやすくなるのです。

 

 月経中は、月経による出血で体力が低下している時ですから、激しい運動をして体力を消耗したり、雨に濡れて体を冷やしたりすることは好ましくありません。寒邪や湿邪などを感受して、気血の流れが悪くなり月経痛がひどくなったり、月経不順になったりしますので、月経期間中は冷えないよう保温に注意をしましょう。

 

 また、仕事や勉強で夜更かしして睡眠時間を減らすこともあまりよくありません。睡眠中に陰血は補われるので十分な睡眠が必要です。基本的には女性は男性より1時間は多く寝た方がいいと言われています。

 

 食事も節度を持って、激辛の食べ物を過食すると熱を発生するかもしれませんし、逆に冷たい物を食べ過ぎると体が冷えてしまいます。忙しいから簡単にお菓子やインスタント食品で済ませるのも可能な限り減らすよう努力してみてはいかがでしょうか。

 

 月経期間中以外も何をしてもいいわけでもなく、男性であれ養生は大切なことなのですが、女性の月経期間中は特に注意をした方がいい時期です。気持ちが昂るようなことは避けて、睡眠を十分とり、養生をしてみてください。


昭和堂薬局 | 2017年11月2日

 

中医学的にみる性差 ~女性の中医学的特徴~

 人には、男性と女性の違いがあります。解剖学的にも、生理機能的にも違いがあります。中医学において男女を陰陽で分けると男性が陽、女性が陰となっています。
また、女性には月経、妊娠、出産、授乳があり血を消耗しやすいという特徴があります。これらのことから女性にとって血が重要な要素になります。

 

 異なった側面からの見方をすると、気持ちが塞ぎ込むことで、気が停滞し、血が滞るといろいろな病気になりやすくなります。女性はその傾向が顕著であり、これは肝は血を蔵すこと、肝は条達(のびのびとする様の事)を好む性質があること、情志と深く関わっており、血の不足が肝経におよび気血の伸びやかさが失われることにより衝任(前回コラムで説明)を損傷し月経、妊娠、出産に関係する病が発生してきます。

 

 婦人科疾患において五臓のうち、肝を調節することが重要です。肝は女性の先天であるという言い方もあり、これは肝が女性の発育と生殖に携わることを表します。また肝は乳頭部を管轄していることから、乳房部の疾患も肝経に関わっています。

 

 女性は肝や血とかかわりが深いことがご理解いただけたでしょうか。
そこで、今回は、女性のよくある症状であまり取り上げられない症状の一つである「月経前に乳房部が脹る(ひどいと痛む)」に注目してお話ししてみたいと思います。

 

 月経前の乳房部の脹りは、女性のよくある症状です。しかし、この症状を訴えて来店する方はほとんどいません。しかし、この症状は女性の心身の健康や妊娠・出産に影響する可能性のある症状です。実際、子宝の漢方相談に来られる方で、高プロラクチン血症がある方のほとんどは、月経前の胸の脹りがあります。その逆、胸の脹りがあると高プロラクチン血症というわけではないのですが…

 

 生理痛や生理前の胸の脹りなどはあって当たり前と思っている方が多いようですが、健康であれば無くてよい症状なのです。その時はつらいけど生理前後だけだから我慢することはあまりいいことではないかもしれません。もしかすると何か(病気)が隠れてるかもしれないですから…


昭和堂薬局 | 2017年10月16日


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