今回、横浜日野にある善光寺さんからの依頼で、井上家のお墓があるやすらぎの郷霊園の「やすらぎ通信」にコラムを掲載したのでご紹介します。
◆仏教と東洋医学
お釈迦さまは医者の王様の意で、医王と言われることがあります。
『医王の目には百草みな薬なり』と言われる事もあり、お釈迦さまが薬草に関する知識を利用して多くの人々の病気を診ていられたあります。
仏教では、心身一如(しんじんいちにょ)といわれ、身体と心・精神は分けて考えることはできません。体と心のバランスを保つという意味で、仏教と東洋医学は似通っている点があるのではないかと思います。身体と心の健康について学んでいきたいと思います。
第1回 ~東洋医学的身体のバランスとは~
◇陰と陽
東洋医学では身体のバランスを示す“ものさし”の一つに「陰」と「陽」があり、世の中に存在するすべてのものは、この「陰」と「陽」との二つの要素から成り立っていると考えています。
天は陽・地は陰、熱は陽・寒は陰、夏は陽・冬は陰、男は陽・女は陰といった具合です。この陰と陽の関係は相手がいなければ自分もいない、例えば「天」がなければ「地」はありません。逆に「地」がなければ「天」もありません。お互いに協調し合い、ときに相手を抑えたり、ときに抑えられたりしています。陰が強く雨ばかりでも、陽が強く晴ればかりでも豊かな実りは得られません。この様に陰陽は変化し合いながらバランスを取っているのです。
人は、男女の交わりで生まれます。具体的にいうと陽である男性の精子と陰である女性の卵子が交わることで新しい命が生まれてきます。
これとは逆に、人の死とは陰と陽の交わりが無くなり、陰陽が乖離してしまうことで、人は亡くなっても物質(陰)はそのままで、エネルギーである気(陽)が無くなった状態なのです。そして、身体から離れていった陽気が三途の川を渡っていくのではないでしょうか。この先は善光寺さんお任せします。
これを踏まえて考えてみると、人間の健康とは一体どんな状態なのでしょうか。
◇健康とは
体の働きを「陰」と「陽」でみると、基本となる陰は物質、陽は機能と捉えることができます。機能である陽の働きは物質代謝やエネルギー代謝、成長などで、陰である物質は機能を支える物質(例えば血)です。この陰陽のバランスが保たれていると健康といえるのです。このバランスが崩れることにより人は病気となってしまいます。
では、陰陽のバランスの崩れとはどんな状態なのでしょうか。
なんらかの原因により、陰陽のどちらかが強くなる、もしくはどちらかが弱くなって起こります。簡単にいうと陽が強くなる、または陰が弱くなると熱症状が起こります。陽が弱くなるまたは陰が強くなると冷え症状が起こります。
◇自然のバランス
この陰陽のバランスの崩れが自然界で起こっている事柄として地球温暖化が挙げられるでしょう。これは環境破壊などでオゾン層が薄くなり陽である日差しが強くなったことや陰である地表をアスファルトで覆い隠してしまった事による地球の熱症状なのです。
しかし、自然界もこの状態を元に戻そうとする力があります。熱せられて乾いてしまった地表を潤す雨は人間が利便性だけを追求し作り上げたこの異常な状態を戻そうと過剰反応を起こし、その結果ゲリラ豪雨や集中豪雨という形で天災という災害(病気)を生んでいるのではないでしょうか。
◇先人の知恵
人間もだんだんと年をとっていくと陽であるエネルギーが不足し始めます。そこに冷房や冷たい物の摂り過ぎで陽を損傷して冷えが起こり、いろいろな病気が起こってくるのです。
日本には、“年寄りの冷や水”という諺があるように、だんだん年を重ねていくと冷えるような行為は慎まなければいけないのです。
日本には四季があり、四季折々の食べ物があります。その食べ物にも体を温めるもの、体を冷やすものがあります。簡単にいうと夏採れるものは体を冷やし、冬に採れるものは体を温めます。しかし、現代ではスーパーの店頭で季節を感じられなくなっていますよね。冬でも夏野菜のトマトやキュウリ、なすなどが店頭に並び、日本料理のお店でも冬のメニューに普なすを使った料理が出ることもあります。このような食事は陰陽のがランスから見ると違和感があります。
「なすを食べる時は生姜を添える。」これは、夏になすで冷えすぎないために生姜を添えて陰陽のバランスをとっている先人の知恵。冬はもともと寒くて体が冷えているのに、更に体を冷やす食材をとってバランスを崩すこともないかと思います。その様な見方で生活習慣を振り返ると意外に体を冷やしている事に気がつきます。先人の知恵、日本の伝統食を見直して元気な生活を送れるようにしたいですね!