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炎症と不妊症

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 女性の生殖器系の炎症が不妊症の原因の可能性の一つとして挙げられています。その炎症を発生させる代表的な物質がプロスタグランジンという脂質メディエーターです。このプロスタグランジンは痛みを起したり、子宮を収縮させたりします。一般的に痛み止めはこのプロスタグランジンの生成をブロックすることで痛みを抑えています。

 

 以前、このコラムで書きましたが、排卵は卵子だけが卵胞から飛び出るのではなく、卵丘細胞と卵丘細胞が分泌したヒアルロン酸を主成分にした細胞外マトリクスが卵子を守る形で排卵されて、排卵時の衝撃やプロテアーゼ(分解酵素)などから卵子を守ります。その後、卵管膨大部で精子と出会うと、精子は精子自体が持っている酵素でヒアルロン酸を分解しながら卵子に到達します。このときに同時並行で起こっている反応として、排卵時にはケモカインという物質が卵丘複合体を固くして守り、その後、精子と出会う頃にはプロスタグランジンにより卵丘複合体がほぐされて、受精を促しているのです。

 

 排卵前後で痛み止めを飲むと受精が阻害されることがいわれるのは、このプロスタグランジンが十分働けないためなのです。

 

 しかし、このプロスタグランジンは妊娠過程において良いことばかりをしているわけではありません。不妊症につながる代表的な疾患に子宮内膜症があります。子宮内膜症は子宮内腔に存在するはずの子宮内膜が卵管や卵巣、腹腔といった異なる場所で子宮内膜が増殖してしまう疾患です。このとき、子宮内膜細胞などでプロスタグランジンを作る酵素が亢進し、結果的にできてしまったプロスタグランジンの刺激により子宮内膜細胞自体がエストラジオール(卵胞ホルモン)を産生して、更に子宮内膜を増殖しているのです。

 

 では、どうしたら良いのでしょうか?

 

 子宝希望の場合は、むやみに痛み止めを飲まないほうが良いと考えられます。(特に排卵前後)
プロスタグランジンは脂肪酸から作られる物質です。主に大豆油やゴマ油に含まれるリノール酸から作られます。この系統をω6系脂肪酸といい、現代の人達が好む加工食品などに多く使われています。そしてその加工食品の中の油は熱や酸化によってトランス脂肪酸が多く含まれています。このトランス脂肪酸からはプロスタグランジンはできないようです。しかし、このトランス脂肪酸は炎症の原因ともいわれています。

 

 いい働きをする反面、痛みや炎症を起こすプロスタグランジンなどの対極にある脂質がシソ油や亜麻仁油のω3系脂肪酸です。これらの脂肪酸をバランスよく摂取して過剰に働くことを防いであげるといいですね。

 

 どうしても、痛み止めが必要だったり、すでに子宮内膜症になってしまっている場合は、漢方薬で対応することもできますのでご相談ください。

 

 

 


昭和堂薬局 | 2015年11月10日


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