17日にNHKの「ためしてガッテン」で葉酸を取り上げていました。葉酸摂取で動脈硬化や認知症を防げると…
番組関係者はそうは思ってないかもしれませんが、番組を見た方々はそう感じたのではないでしょうか?
もし、葉酸だけで認知症は予防できるなら葉酸が薬になっているのでは?
認知症、特にアルツハイマー病の進行を食い止める治療薬は、未だ見つかっていません。
この30年で200種類以上の治験が失敗に終わっています。全世界で脳の研究者たちは、新薬がなくても生活習慣を改善したり、血管系のリスク要因を改善出来れば予防ができるのではないかと臨床試験に取り組んでいます。しかし、生活習慣などは不確定要素が多く因果関係を導き出すのは難しいため、根拠が充分得られないために、より困難な「ランダム化比較試験」を行うことで因果関係を探りました。そして、少しずつですが、結果が出始めています。
以前は、アルツハイマー病は脳の病変(老人斑と神経原線維変化)が引き起こすとされ、それを取りのぞく治療薬の研究がされていました。
しかしランダム化比較試験が進み、参加者の認知機能と脳の解剖所見に相関関係がなかったのです。(老人斑と神経原線維変化が多くあっても認知症と診断されない人たちがいたのです。)
では、老人斑や神経原線維化が進んでも認知機能に差が出てアルツハイマー病と診断される人と認知機能が衰えない人がいるのはなぜなのでしょうか?
その答えはまだはっきりとは解っていませんが、生活習慣や食生活に差があることは解ってきています。フィンランドで行われた大規模ランダム化比較試験では、介入群は「食事(地中海式料理を食べる)」と「運動(筋力トレーニングと有酸素運動)」、「認知トレーニング」、「健康観察と管理」が行われています。これは、生活習慣病予防と知的活動が認知症を防ぐ可能性があるという観点で行われました。
このランダム化比較試験で介入群は、対照群に比べ認知力が優位に向上していました。このような疫学研究が世界各地で行われています。そして結果も出てきているようです。これらの結果からも、何か一つだけを改善するのではなく、健康で知的な生活こそが認知症の予防であり、延いては病気全般を防ぎ、健康な生活を送れるということを意味しているのではないでしょうか。