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子供の心身に影響する授乳期の母と子の関係

 人間を含めた哺乳動物の子供の発育で最も特徴的なものの一つとして、出生後の哺乳を中心にした母親と子供のつながりが強いことが挙げられます。
 この期間に子供が母親から受ける様々な刺激は、その後の成長に大きな影響を与えています。虐待やネグレクトといった幼少期の環境的ストレスによって、成人期の気分障害や不安障害が引き起こされることなどが報告されています。また、幼少期の長期的なストレスによって肥満や糖尿病、心疾患など様々な病気の発症率が上昇することがわかってきています。

 

 動物実験では早期離乳という、ある種の育児放棄のような状態をラットやマウスにしたところ、早期離乳群の仔は通常離乳群の仔に比べて、社会的接近の減少や探索動作の低下、低体重を示すという報告がされています。
 また早期離乳時には、心拍や体温などの自律反応が高くなることが認められました。また、早期離乳マウスでは成長後の不安行動の増加やオスの攻撃行動の増加が観察され、早期離乳の雌マウスでは、自分が母親になった際に、排泄を促すためや母乳を飲むように促すための仔をなめる行動の時間が短縮されました。

 

 この変化についての詳しいメカニズムは省きますが、幼若期にストレスを受けたことで、ストレス内分泌系の亢進により副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド)の放出が亢進し、不安感が増強しています。この中枢神経系への影響は大きく、永続的であると言われています。

 

 また、これらの体の変化により腸内細菌叢が変化します。この腸内細菌の変化が更にストレスの影響を永続的にしているのです。一方で、母子間で伝達される乳酸菌類は、子供の中枢発育を促します。(この発育メカニズムは、まだ解明されていません。)

 

 この事実は、現代社会に大きな影響を及ぼしかねません。現代社会では共働きはそれほど驚くことではなくなってきています。しかし、母親が子供に与える影響は大変大きく、その子の将来にも関わってきます。これ以上は薬屋のブログでなくなってしまうので止めておきますが…

 

 このような現代社会環境から、未来のある子供達を守っていくためには、子供と接する時間をなるべく多くすることと、食生活などを疎かにせず、腸内環境、特に腸内細菌叢を健全な状態に保っておくことが大切になります。将来的には、虐待やネグレクトで苦しんでいる方々に、特定の腸内細菌叢が使われる可能性も出てきているようです。


昭和堂薬局 | 2019年4月15日


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