体外受精・胚移植において複数回の胚移植にもかかわらず着床が成立しない場合を反復着床不全といいます。(3~4回の良好胚移植で妊娠が成立しない場合)
着床不全の原因としては、胚の質や子宮内病変などがあげられますが、それらが問題なくても着床しない場合、免疫因子が関与していると可能性が考えられています。(子宮内の細菌叢が着床・妊娠維持に関係していると考えられています。この細菌叢も免疫因子に関係しているのかもしれません。)
妊娠は半分非自己である胚を母体が受け入れるために免疫寛容が必要で、免疫寛容のメカニズムはさまざまな因子が絡み合い妊娠の成立・維持が行われています。しかし、そのメカニズムは完全には解っていませんが、着床不全や不育症はヘルパーT細胞(Th細胞)やナチュラルキラー細胞などの免疫異常が関係していると言われています。
*着床のメカニズム
黄体中期の着床時期になると子宮内膜組織へ免疫細胞の浸潤、接着分子やケモカイン、成長因子、サイトカインの同時発現が起こります。子宮内NK細胞は細胞障害性が弱く保護的に働き、TNF-α、Th1細胞、IL-15などの炎症誘導性サイトカインや免疫細胞が、接着分子や非接着分子を調整することで胚の接着が完成します。子宮NK細胞はサイトカイン(IL-8)などを産生し、子宮内膜の間質細胞が分泌するケモカインとともにトロホプラスト(胎盤をつくる絨毛細胞)の浸潤を調整しています。マクロファージはアポトーシス性トロホプラストの排除と子宮内膜のリモデリング(再構築)を調整し、胚の浸潤を調整しています。子宮内の免疫寛容誘導性樹状細胞は制御性T細胞(Treg)の活性化や増殖をコントロールし、GM-CSF(顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、細胞性免疫の主役である白血球(顆粒球、単球)の分化誘導作用をもち、Th細胞が産生している)はこの樹状細胞を調節する重要な因子です。
非常に難しい説明になってしまいましたが、簡単にいうと月経期から着床期は1型免疫反応(Th1)が優位になり着床していきます。その後、2型免疫反応(Th2)が優位になり妊娠が維持されます。
以上より、アトピー性皮膚炎や花粉症などのアレルギーがあったり、何らかの原因で体に炎症があったり、強いストレスがあるなどで着床しにくくなるのです。
日頃から、生活のリズムを整え、食生活を疎かにせず、適度な運動などでストレスを発散しましょう。コロナ禍で、思ったような生活がしにくいと思いますが、工夫をしながら上手く生活していくコツを掴んでみてください。