『昭和堂薬局』

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やすらぎ通信 平成28年春彼岸

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 やすらぎ通信を書き始めて、今回で7回目になりました。

最近は、テレビや雑誌などの影響で、一般の方たちにも漢方が知られるようになってきましたが、番組を面白くするためか情報を簡単に伝えるためか、中には「そんなこと言っていいの?」と思うことがあります。前号では、風邪の漢方イコール葛根湯ではないことをお話しましたが漢方も薬ですから正しい使い方をしていただきたいと思っています。そこで、今回はテレビCMでよく耳にした古典の原文をご紹介しながら、東洋医学(漢方)について解説したいと思います。

 

帝曰く、人 年老いて子なき者は、材力尽きたるか、将(は)たまた天数然るか。岐伯曰く、女子は七歳にして腎気盛し、歯更(かわ)り髪長ず。二七にして天(てん)癸(き)至り、任脈通じ、太衝の脈盛し、月事時を以て下る。故に子あり。三七にして腎気平均す。故に真牙生じて長極まる。四七にして筋骨堅く、髪の長極まり、身体盛壮なり。五七にして陽明の脈衰え、面初めて焦(やつ)れ、髪初めて堕(お)つ。六七にして三陽の脈上に衰え、面皆焦れ、髪初めて白し。七七にして任脈虚し、太衝の脈衰少し、天癸渇き、地動通ぜず。故に形壊(つい)えて子なきなり。丈夫は八歳にして腎気実し、髪長じ歯更る。二八にして腎気盛し、天癸至り、精気溢写し、陰陽和す。故に能く子あり。三八にして腎気平均し、筋骨勁強たり。故に真牙生じて長極まる。四八にして筋骨隆盛にして、肌肉満壮たり。五八にして腎気衰え、髪堕ち歯槁る。六八にして陽気上に衰竭し、面焦れ、髪鬢頒白たり。七八にして肝気衰え、形体皆極まれり。八八にして則ち歯髪去る。腎は水を主り、五臓六腑の精を受けてこれを蔵す。故に五臓盛なれば、乃ち能く写す。今五臓皆衰え、筋骨解堕し、天癸尽きたり。故に髪鬢白く、身体重く、行歩正しからずして、子なきのみ。

 

 この文章を簡単に解説すると、人の成長や老化を具体的に示したもので、女性は7歳ごとに成長し、28歳~35歳ぐらいまでに精力がピークになりその後衰えていく様を現し(二七は2×7で14歳のことです。)男性は、8歳ごとに成長、老化が起こると言っています。この「黄帝内径」は約2千年前の書物といわれていますが、女性は14歳(二七)で生理が起こり、49歳(七七)で生理がなくなると言っていることからも、今も昔も成長・老化はそれほど変わっていないことがわかります。(医学の発達で寿命は延びていますが)

 このことを、漢方的に言うと、「腎」という臓の力の満ち引きであらわされ、五臓の精を受けて精を蓄えています。それゆえ、五臓が盛んであれば年相応でいられますが、五臓が衰えると老いが早まってしまいますということです。2千年前に現代に当てはまるこのような正確な記述があることに、驚かされると共に貴重なことだと思います。また、「黄帝内径」の後に「傷寒論」という古典がありますが、かの有名な「葛根湯」や「麻黄湯」などがここに記載されていて、現代でも薬として用いられていることも漢方の偉大さを物語っています。(西洋医学には2千年も前の薬ってないですよね)

 

 では、今なぜ漢方薬が注目されているのか?

 西洋医学は、病気の場所を見ます。少し違った言い方をすると、病気の場所しか見ません。目の病気であれば目しか見ていません。しかし東洋医学は、体全体のバランスの崩れが目に影響したと見ます。そして、使われる薬も西洋医学では抑えつけたり除いたりする薬を使いますが、東洋医学では主に補う薬で心身のバランスを整えて病気を治そうとします(東洋医学でも抑えつけたり除いたりする薬もありますが)。

 人は、自然界の中で生きています。人のバランスも自然界とは切り離して語ることはできません。また、心と体も切り離せません。人間は自然界も含め心身のバランスで成り立っているのです。

 西洋医学はできてしまった物を外科的にとったり、感染症を起こしていればその原因菌を殺してしまうような治療。このような病気は西洋医学が得意とする分野で、東洋医学は得意ではありません。しかし不足や衰えが原因で起こってしまったような病気は、東洋医学が得意とする分野です。具体的にはアトピーや婦人科疾患、メンタル疾患などが得意疾患として挙げられます。現代は高齢化や食の乱れ、冷蔵庫の普及による冷え(陽の不足)など、不足を起しやすくなってきています。それら時代的背景も漢方が注目される所以かもしれません。

 

 「女性の7歳ごとの変化」についてそれに関連する更年期障害を東洋医学的に見てみましょう。

閉経という正常な生理変化が49歳(七七)前後で起こります。女性であればだれもが通る道です。しかし、黄帝内径にあるように“天癸渇き”(天癸は性ホルモン)といっているように、性ホルモンの急激な変化が生じます。それまで、女性の身体は女性ホルモンで守られてきたので、その守り手がいなくなるのですから、心身に大きな影響を与えることになるのです。しかし、この閉経前後を「更年期」といい心身に不調をきたすと「更年期障害」といいます。何事もなく「更年期」を通過する人も多くいらっしゃいます。最近は男性更年期もありますが、性ホルモンの変化が女性ほど急激でないので症状も緩和なことが多いようです。

 この更年期障害を漢方的にとらえると腎の衰えです。専門的な言い方をすると腎虚です。この更年期障害における腎虚には、腎陰虚と腎陰陽両虚の2つのタイプに分けられます。基本的に女性は陰の性質があり、生理や妊娠、授乳をしてきたこともあり、陰の不足になりやすい傾向にあるようです。そのため、ホットフラッシュや多汗、手足もほてりといった熱症状が起こりやすいのです。このような症状のときは、「知柏地黄丸」や「杞菊地黄丸」などを中心にしていきます。また、陽の不足も伴う場合は「参馬補腎丸」や「至宝三鞭丸」を使います。しかし、この性ホルモンの急激な変化は簡単ではないことが多いので、「知柏地黄丸」や「杞菊地黄丸」に紫河車(胎盤エキス)を併せたり、症状によって他の漢方薬を足したりもしていきます。

 

 今回は、更年期という状態を例に人の老化について解説しました。この連載コラムの第1回目に陰陽について解説していますが、臓腑で中心になるのが腎です。腎は成長、発育、生殖を主る臓腑で、精を貯蔵しています。補腎の漢方薬で有名なのは「八味地黄丸」で、腎陽虚の薬です。おしっこの異常で有名になった処方です。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんね。加齢による衰えを予防していく養生として補腎の漢方をうまく使うといいですよ。(このやすらぎ通信を編集者も飲んでるんですよ! 紫河車)


昭和堂薬局 | 2016年3月23日

 

「家族みんなで楽しめる」カレールー

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 大手食品メーカーのカレールーの宣伝に違和感を感じるのは私だけだろうか?

 

 この商品は、「特定原材料7品目」を使用していないことをうたっている。皆さんは、この広告からどんなイメージをするでしょうか。私は食物アレルギーを持っているお子さんでも食べられるので、他の家族と分けて作らなくてもいいんだなと思うと感じてしまいました。確かに、国が定めた「特定原材料7品目」(アレルギーを起こしやすい、表示が義務化された原材料)は入っていないので、この7品目にアレルギーがある方でも、この製品には入っていないのでアレルギーは起こさないのかもしれませんが、パッケージの裏の原材料を見てください。多くの添加物が使われています。その中にはヤシ油クリーミングパウダーが使われています。私がよく見かけるカレールーにはパーム油がよく使われています。ヤシ油はココナッツオイルのことです。(去年流行った油です)これらの油の組成は飽和脂肪酸、一価の不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸です。多価不飽和脂肪酸はリノール酸で、ω6系脂肪酸です。以前からお知らせしているようにω6系脂肪酸は炎症を起こす油なのです。

 

 昨年の実験医学という本に、「卵白アルブミンを摂取するとアレルギーを呈するマウスの食物アレルギーモデルを用いた検討で、ω6系のリノール酸が多い大豆油を含んだ餌を与えると腸管アレルギー症状が強く出る一方で、ω3系のαリノレン酸が多い亜麻仁油を含んだ餌を与えると腸管アレルギー症状が大幅に緩和した」と出ていました。これはあくまでも動物実験ですので、食物アレルギーがある方がこのようになるとは限らないのですが、脂質、特に多価不飽和脂肪酸の組成は重要なようです。

 

 このことだけとってもこの商品を食物アレルギーがあるお子さんに積極的に食べさせていいのかなと思ってしまいます。

 

 確かに、食物アレルギーのある方がいらっしゃる家庭では食事は非常に神経を使い大変だと思うので、このような商品は便利でいいのでしょうけれど…

 

 我々の体にとって、食は非常に重要です。商品イメージに惑わされることなく、しっかり成分表示を見て選んでもらいたいと思います。


昭和堂薬局 | 2016年2月17日

 

2月7日の読売新聞に主な医療機関の不妊治療実績が掲載されました

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 読売新聞は、昨年高度不妊治療を行う医療機関に2014年の治療実績などをアンケートし、その実績を発表しました。

 

 当店でも子宝についての漢方相談は多く、そのほとんどの方が医療機関にかかられています。ご相談に来られると、一応どこの医療機関に行かれているかを聞いています。最近は人気のあるところはなかなか予約が取れないそうです。しかし、読売新聞の実績を見ても、成績が良い医療機関にかかるのがいいように思いますが、当店に来られる方たちの評判を聞いていると、必ずしも表の上位にあるからいい訳でもないようです。

 

 漢方薬局選びもそうだと思いますが、医療機関を選ぶときも数字だけではなく、相性やその医療機関の姿勢なども考慮して選ぶことが大切なんでしょうね。

 

 今回、読売新聞の実績をみて、今か受診している医療機関を信頼されてるのであれば、すぐに変えたりしないほうがいいように思います。


昭和堂薬局 | 2016年2月10日

 

がんには免疫を上げればいいの?

 アスピリンを長期服用している人達が、服用していない人達と比べ大腸がんの発生が有意に低下することが疫学調査で示されました。アスピリンは非ステロイド性抗炎症薬で、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素を阻害してプロスタグランジンという痛みや炎症に関係する物質の生成を阻害する薬です。このことから研究が進み、COXががんの発現や転移、増殖に関係していることがわかってきました。

 

 このプロスタグランジンは、脂質中のリノール酸からアラキドン酸という物質を経てこのCOXによって作り出されます。正常細胞が何らかの影響でCOX-1によってつくられたプロスタグランジンE2が関係し、前がん病変ができ、その後、その組織の間質細胞で誘導型のCOX-2が発現していき、がんを発現させていくのです。

 

 また、国立がん研究センターのコホート研究では、いくつかのがんと魚の摂取量ががん罹患率に関係していることが示されています。この研究の考察では炎症抑制に働く魚に含まれる油の摂取が多いほど、ガンに罹り難いと言っています。

 

 この2つのことから脂質、特に多価不飽和脂肪酸の摂取ががんの発現や転移、増殖に関係がありそうです。

 

 このようにがんに対する研究が進みいろいろなことがわかってきており、疫学データも多く出てきています。

 

 一般的に、がんは何らかの要因で免疫力が下がり、それが原因でがんができてしまうと思われがちですが、それほど単純ではなく身近でも非常に元気な人ががんになってというような経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?確かに免疫が結果的に下がってしまうことはあるかもしれませんが…

 

 がんを予防する為や不幸にしてがんを患ったからといって、やみくもに免疫を上げればいいわけではありません。場合によっては逆にその行為ががん細胞を助けてしまうことにつながる可能性もあります。

 

 がん組織では炎症が起こっています。この炎症が起こらないようにすることががんの予防につながる可能性があるといえるでしょう。


昭和堂薬局 | 2016年1月27日

 

肥満遺伝子

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 日経サイエンスに“姿現す肥満遺伝子”という題目のお正月明けで気にしている方も多い肥満について興味深い記事が載っていたのでご紹介させていただきます。

 

 今日、現代人の肥満が問題視されています。肥満が原因で糖尿病などの生活習慣病が増えてきました。その原因はある遺伝的な変化が原因ではないかというものです。
 人類の祖先となった類人猿は,ある種の酵素の遺伝子が変異した結果、飢餓を生き延びたとみられています。現代における肥満と糖尿病の蔓延は,大昔に生じたこの遺伝子変異のせいである可能性が浮かび上がってきました。
 その遺伝子変異は“ウリカーゼ(尿酸酸化酵素)”という酵素の遺伝子に生じたもので、この“ウリカーゼ”はもともと尿酸を分解する酵素で、この酵素の遺伝子が変異したことによって食べた物を、その場でエネルギーとして燃焼するのではなく脂肪として蓄えられるようになったからだと言っています。しかし、飽食の時代の現在では、この変異が肥満や糖尿病の一因になっているというのです。

 現代の多くの人が慢性的に贅沢な(欧米型)食事を摂り過ぎているため、尿酸を分解する“ウリカーゼ”を持たない人間は尿酸が上昇してしまいます。しかし、食習慣によってこの上昇は変化し、人によってはその食生活で尿酸が上昇したりしなかったりするのです。その原因食品の一つに果糖があげられています。確かに生成された砂糖や加工食品などに使われる異性化糖(ブドウ糖果糖液など)が多く使われています。これらが増えるにつれますます肥満や糖尿病が増えていると指摘しています。これら精製された果糖を減らし、その分新鮮な果物などからとれば、果糖や尿酸の影響を抑えるビタミンCや抗酸化物質が含まれるので様々な病気の予防につながるだろうと述べています。

 

 日経サイエンスで述べている疫学調査や科学的理論については割愛しますが、自然に近い食べ物を食べ、適度に運動することが現代人には必要だと思われます。確かに簡単に摂れる便利な食べ物や飲み物が重宝されていますが、それによって病気が起こっているのであれば、すぐにでも止めたいですよね。


昭和堂薬局 | 2016年1月11日

 

怖い心筋梗塞

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 「テラスハウス」出演していた31歳の男性が心筋梗塞で亡くなったことは、記憶に新しいことではないでしょうか。私の身近な人たちがこの病気で亡くなったり、意識不明になったりしたので、皆さんの予防につながってくれたらと思いこのコラムを書いています。

 

 この病気は、心筋に栄養や酸素を送っている冠状動脈が何らかの原因で通りが悪くなり心筋が壊死してしまう病気です。

 

 独立法人がん研究センターのコホート研究(疫学研究)では、約4万人の日本人のデータから魚の摂取量と心筋梗塞の関係を検討し、2006年に発表しています。これによると、高齢になるほどリスクが上がり、また魚の摂取量が多い人ほどリスクが下がっています。
 元々、魚に含まれるω3系の脂質が注目されたのは、グリーンランドのイヌイットに心筋梗塞が少なく、彼らの食生活を調べたところ、ω3系脂質を多く含む食品を摂取していたことからでした。動物実験でも、マウスに心肥大・心不全を実験的に起させ、ω3系脂肪酸の心保護作用を解析したものでは、体内のω3系脂肪酸レベルが上昇するほど心筋の線維化が抑制されたそうです。

 

 もう一方では日本人の食の欧米化でω6系脂肪酸や飽和脂肪酸の摂取量が多くなっていることも、心筋梗塞を含め多くの炎症性疾患が多くなっている原因の一つだと思われます。

 

 最近では、健康番組でω3系の脂質を紹介したことでエゴマ油などのω3系脂肪酸を多く含む油が人気なようですが、今の食生活にエゴマ油をプラスするのではなく、ω6系脂肪酸が多い場合にはそれを少なくしてエゴマ油などのω3系脂肪酸を摂取して欲しいのです。

 

 我々の食生活の中でω6系の脂肪酸は多く使われています。例えば加工食品の表示に植物油脂という文字がよく出てきますが、これもω6系脂肪酸です。昔は健康にいいといわれていたマーガリンやコーヒ―フレッシュにも使われています。インスタントラーメンやカレールウなど挙げればきりがないほどです。

 

 また、現代は飽食の時代と言われています。それによる肥満も炎症系の病気になりやすくなります。肥満になってくると白色脂肪細胞がうまく働けなくなり、身体を守るアディポネクチンというホルモンの分泌量は低くなり、逆にTNF-αなどの炎症性物質を多く出し始めます。このことにより、炎症性の病気である糖尿病や血管系の病気などになりやすくなってしまうのです。

 

 自分の食生活を見直してみてください。魚は適度に食べていますか?加工食品やインスタント食品多くないですか?お腹いっぱいに食べていませんか?外食や買い弁当ばかりも問題です。

 

 健康にいい食事を目指すとよくベジタリアンになってしまう人がいらっしゃいますが、これもまたバランスの悪い食生活です。

ご自身や身内の方が食材から作る食事が基本です。どうしても買い弁当や外食になってしまう場合はサプリメントで補うことも仕方のないことだと思いますが、これも質が問題です。しかし、基本は食事で予防することが大切です。


昭和堂薬局 | 2015年12月8日

 

養生のすすめ

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 黄帝内経という数千年前の書籍にこんな一文があります。

「天師に問いて曰く、余聞く、上古の人、春秋皆百歳を度えて、しかも動作衰えず。今時の人、年半百にして動作皆衰うる者は、時世異なるか、人將たこれを失するか。岐伯対えて曰く、上古の人、其の道を知る者は、陰陽に法り、術数に和し、食飲に節あり、起居に常あり、妄りに労を作さず。故に能く形と神と倶にして、尽く其の天年を終え、百歳を度えて乃ち去る。今時の人は然らざるなり。酒を以て漿となし、妄を以て常となし、酔いて以て房に入り、欲を以て其の精を竭くし、以て其の真を耗散す。満を持するを知らず、時ならずして神を御す。務めて其の心を快にし、生楽に逆い、起居に節なし。故に半百にして衰うるなり。」(黄帝内経上古天真論篇)

 これは、黄帝が自分のお抱えの医師との問答を文章にしたもので、簡単に言うと「昔の人は百歳まで生きていたのに、今の人達はなぜ五十歳くらいで亡くなるのはなぜか?」お医者さんは「昔の人は養生をわきまえて、節度思って生活していたが、今の人は酒を水のように飲み、良くないことを平気でして、酒を飲んでは色事をして精気を消耗してしまい、精気を満たしておくことをしらず、一時の快楽で養生をしないので五十歳で衰えてしますのです。」と答えています。

 

 数千年前の会話なのに、今の時代にも言えることですよね。

食べ物は簡単便利なものがもてはやされて、インスタント食品や加工食品が飛ぶように売れ、身体に悪いことと気がつかずに、成長期の子供にも食べさせる。体調が悪くなって相談に来て、それを指摘され初めて気がつく、これでいいのでしょうか?

体調が悪くなると、化学物質だらけのサプリメントを飲んでみる。もっと体調悪くなりませんか?

サプリメントがすべていけないと言っているわけではありません。自然に近いものを選ぶべきですし、サプリメントを飲んでいれば、食事がむちゃくちゃでいいわけではありません。

 

 このコラムで季節の養生法を解説してきました。ちょっとそれを実践してみませんか?

もしかしたら、それだけで体調良くなるかもしれませんよ!


昭和堂薬局 | 2015年11月2日

 

やすらぎ通信 秋彼岸

通信39号昨年始めた「やすらぎ通信」のコラム第5弾です。

 

秋の養生訓

 

 秋は五穀豊穣の季節です。私たち日本人が主食としてきた米や粟、黍、稗などの穀物が実りのときを迎えます。そして、残暑が終わり、夏に疲れた胃腸の調子も整って食欲が増す季節です。空は高く、空気は澄み、健康や体力の回復には良いので、「食欲の秋」「スポーツの秋」といったりするのはこのためです。しかし、夏から冬に変わっていく過渡期であるため、日中と朝夕の気温差が激しく、同時に空気は非常に乾燥してきます。そういった面では体調管理が難しい時期でもあります。

 

 秋の三箇月は、万物が成熟し、収穫の季節である。天気はすでに涼しく、風の音は強く急で、地(ち)気(き)は清(せい)粛(しゅく)として、万物は色を変える。人々は当然早寝早起きすべきである。鶏と同じように、夜明けとともに起き、空が暗くなると眠り、心を安らかに静かにさせて、秋の粛殺(しゅくさつ)の気候の人体に対する影響を緩和(かんわ)させ、神気(しんき)を収(しゅう)徹(てつ)して、秋の粛殺(しゅくさつ)の気を和(なご)ませる。心を外にはたらかせないで、肺気を清浄に保持しなければならない。これが秋に適応して、「収気」を保養する道理である。もしこの道理に反すると、肺気を損傷し、冬になって食物を消化しきれないで下痢を病んでしまう。人が冬の潜伏(せんぷく)閉蔵(へいぞう)するという気に適応する努(つとめ)を減少させてしまうのである。

「黄帝内経」・『素問・四気調神大論』:中国伝統医学の古典より

 

○秋は「肺」と関係が深い
 秋は「肺」と関係が深く、肺は皮膚や体毛をコントロールし、肺の異常は空気の出入りする鼻に表れるとされます。また、肺は五臓の中で一番高い場所にあるので、「五臓六腑の蓋」と呼ばれ、気管やのどを通じて外界に直接接し、外気の影響を受けやすい臓器です。そのため、秋は大気の乾燥による影響を受け易く、秋に起こりやすい咳、鼻炎、喘息、皮膚のかさつきなどの症状は、乾燥した大気を取り込むことにより肺が乾くことが原因で起こるのです。

 

 また、「肺」は「大腸」と表裏の関係にあり、肺と大腸は互いに連動しています。そのため、気温が低下して皮膚が閉じると鼻や口などの呼吸器とともに、大腸も余分な水分や老廃物を体外に出さなければならず、スムーズに排泄されずに滞った毒素は、ニキビや吹き出物、シミとして皮膚に現れるようになります。このように、「肺」と「大腸」は密接な関係にあり、「肺」の支配下にある皮膚に症状が現れるのです。

 

 東洋医薬学でいう「肺」は、肺単体のことではなく、その影響を受ける皮膚や鼻、表裏一体の関係にある大腸を含めた部分を示し、そのおもな働きは、呼吸によって気(エネルギー)を取り込み、全身に運搬し、臓腑器官の働きを助け、体液を調節し維持することとされます。そのため、ひとたび「肺」が「燥邪」に侵されれば、その異常は、咳、疵、鼻づまり、くしゃみ、鼻炎、喘息、便秘、下痢、腹痛、皮膚や頭髪の乾燥など、幅広い症状として出現するのです。

 

 秋の養生は、こうした大気の乾燥から体を守り、冬に備えて免疫力を高めることが大切なのです。

 

○肺を補う辛味の食材
 辛味の食べ物は、大気の乾燥や気温の低下で働きの弱まった肺や呼吸器の負担を軽減する効用があります。「燥邪」による症状を未然に防ぎ、「肺・大腸」を補う働きをもつのが辛味の食材です。ねぎ、しょうが、わさび、唐辛子などの薬味や香辛料はもちろん、東洋医学では、大根、たまねぎ、しそ、にらなど、ほのかに辛味のある食材も辛味に配当します。ビール以外の日本酒や焼酎、ウイスキー、ワインなどのアルコールも辛味に配当されます。

 

 辛味の食材は、体を温めて余分な水分や滞った気の流れを促し、発散を助ける作用があります。お酒がストレス解消に利用されるのも発散作用があるからです。風邪の初期に、辛味の酒としょうが、卵を合わせた「卵酒」が飲まれるのも、皮膚からの熱の発散、発汗を活発にするためです。

 

 辛味はまた、大腸の働きを活性化して便通を改善する作用もあります。皮膚や呼吸器のみならず、肺と表裏一体の関係にある大腸にも働きかけて、秋に弱りやすい臓腑器官を手助けしているのです。

 

 「肺・大腸」が弱りやすい秋は、辛味の食材で自分自身を補うとともに、相剋の関係にあたる「肝・胆」を、酸味で保護する必要があります。梅干しや酢らっきょう、酢の物などの酸味の食べ物で「肝・胆」を補い、辛味の食害によって傷つくのをあらかじめ防ぐことが大切です。酸味は肝臓の働きを正常にして、疲労回復にも効果があります。

 

 辛味に酸味を添えることは、ピリッとした辛味をマイルドにする調理のルールでもあります。からしの強い刺激をマイルドにするために、からしは食酢で溶くのが基本です。焼き魚には大根おろしに加えて、すだちをしぼり、焼き鳥には七味唐辛子と一緒にレモン汁をかけるなど、辛味に酸味の食材を添える例はよく見られます。

 

○肺を潤す旬の昧覚
 辛味の食材以外にも、秋にとれる旬の食べ物には、「肺・大腸」の働きを補うものがたくさんあります。
そのひとつが梨です。年中見ることの多くなった果物のなかで、梨は店頭にのぼる時期も限られ、旬を感じることのできる数少ない果物のひとつではないでしょうか。最近は収穫が早まり、夏の果物というイメージが強くなりましたが、本来は秋が旬。9月から11月にかけて収穫されます。水分をたっぷり含み、シャリシャリとみずみずしい梨には、肌に潤いを与え、のどの渇きを止め、声がれや咳を止める効果があります。まさに「燥邪」による秋のトラブルを防ぐのにふさわしい旬の食べ物といえましょう。

 

 同じく秋が旬の果物である柿も、咳を抑え、口の渇きを止め、乾燥による呼吸器系の働きを助けます。「柿が赤くなると医者が青くなる」ということわざがあるように、鼻やのどの粘膜を健やかに保ち、免疫力を高めるビタミンCも豊富に含み、寒さの厳しくなる冬に向けて、風邪をひきにくい体をつくるのに大いに役立ちます。

 

 また、いも類や大根をはじめとする根菜類も「肺・大腸」に働きかける旬の食材です。たとえばさつまいもは口の渇きを止めて肺を潤すと同時に、便通を改善して大腸の働きも活発にします。豊富な食物繊維と緩下作用のあるヤラビンという物質の相乗効果により、腸内環境を整えて便通を促してくれます。

 

 晩秋から冬にかけうまみが増し、一年でもっともおいしくなる大根は、ピリリとした辛みが特徴の辛味の食材で、「肺・大腸」を助け、痰を切って外に排出する働きがあります。余分な熱が体内にこもって咳や痰が出る場合に有効です。また、大根が消化によいのは、でんぷんを分解するジアスターゼなどの消化酵素が豊富に含まれているからです。れんこんもまた肺を潤し、乾燥して熱を帯びた肺の熱を取り去る効果があります。れんこんの粘り気のもとであるムチンは、粘膜を保護して丈夫にする効果があるため、鼻やのどの乾燥を防いで働きを高め、病原菌の侵入を防ぎます。

 

 こうしてみると、秋にとれる旬の食べ物に、「肺」を潤し補うものが多いことがわかります。葉野菜や熱を冷ます山菜などに食効を求めた春夏の熱い季節とは、体にとって必要なものが明らかに異なるわけです。その時季にとれる食べ物は、その時季に体の必要とする養分を十分に備え、その時季に起きやすい症状を防ぐ働きをもっているのです。反対に、春夏にとれる野菜や果物類のように、水分が多く、体を冷やす食べ物は、秋口からは控えるようにしなければなりません。

 

 旬の食べ物を摂ることや日本の伝統料理にはそれぞれ意味があるんですよ。


昭和堂薬局 | 2015年9月24日

 

やすらぎ通信 お盆

通信38号

 

昨年9月にスタートした「やすらぎ通信」の第4弾です。

 

仏教では、身心一如(しんじんいちにょ)といわれ、身体と心・精神は分けて考えることはできません。身体と心のバランスを保つという意味で、仏教と東洋医学は、似通っている点があるのではないかと思います。身体と心の健康について学んでいきたいと思います。
前回は、東洋医学における春の養生訓をご紹介致しました。今回は夏の養生訓です。

 

東洋医学では夏の養生訓について次ぎのように述べられています。

 

夏の三箇月は万物が繁栄し、秀麗(しゅうれい)となる季節で、天の気が下降し地の気は上昇して、天の気と地の気は上下交わり合い、万物も花開き実を結ぶ。人々は少し遅く寝て少し早く起きるべきである。夏の日の長さ、暑さを厭(いと)うことなく、気持ちを愉快にすべきで、怒ってはならない。花のある植物と同じように満開にさせ、体内の陽気を外に向かって開き通じ発散することができるようにさせるのである。これがつまり、夏に適応し「長気」を保護する道理である。もし、この道理に反すると、心気を損傷し、秋になって瘧疾(ぎゃくしつ)を発することになり、「収気」に適応する能力が減少して、冬になると再び病を発する可能性がある。
「黄帝内経」(こうていだいけい)・『素問・四気調神大論』(そもん・しきちょうしんだいろん):中国伝統医学の古典より

 

夏は陽の気、言い換えると太陽の作用が最大のときであり、エネルギー(東洋医学では気といいます)も最も強くなる季節です。「木・火・土・金・水」の五行のうち、「火」にあたるのが夏。熱く、明るく、上へ上へと向かって広がり、燃えさかる「火」のイメージです。人体の中で、「火」を司っているのは「心」です。東洋医薬学には「心は血脈を司り、神を蔵し、神志を主る」という働きがあります。「心」の働きは血液循環をコントロールしています。同時に「神」の意味は人間の精神や意識・思考活動、いわば「こころ」をさします。私たちの精神活動のすべては「心」がコントロールしているのです。夏の暑さが厳しくなり、陽の気が最大になると、この「心」の働きも亢進し、オーバーヒートしやすくなります。
私たちの体は、暑くなると汗を出して体内の熱を逃がし、上手に体温を調節するようになっています。しかし汗は同時に血液中の水分とミネラル分も一緒に排出してしまうため、血液の濃度は高くなり、ドロドロと流れにくい状態になります。汗をかけばかくほど体温は下がって涼しく感じられますが、一方で心臓は、流れにくい血液を全身に運ぶためにフル活動しているわけです。
「心」がオーバーヒートすると胸が苦しくなり、脈が早く打つ頻脈や不規則になる不整脈を起こしやすくなります。血液循環も悪くなり、動悸・息切れ・不眠・動脈硬化、ひいては心筋梗塞などの心疾患につながりかねません。

 

○夏の「暑邪」と「湿邪」
東洋医薬学では夏の暑さも病因のひとつと考え、これを「暑(熱)邪」と呼んでいます。「暑(熱)邪」に侵されると、体がほてる、のぼせる、息切れがする、寝つけないなどの熱症状が出現します。汗が多くなって必要な体液やエネルギー(気)も出てしまうため、体力が奪われて非常に消耗し、熱中症などになりやすくなってしまいます。
日本の夏のもう一つの特徴が高い湿度です。この高い湿度がさらに私たちの体に悪影響をもたらします。これを「湿邪」といいます。夏季は暑さのため、冷たい飲み物や食べ物を摂ることが多くなりますが、これも胃腸にダメージを与える原因です。「胃は湿を嫌い、燥を好む」といわれ、冷たい飲み物は、のど越しはいいものの、胃腸内の湿度を高めて、冷やすために働きが弱まり、消化不良、食欲不振、下痢、だるさなどの胃腸障害を起こすことになります。

 

湿度の影響は全身にもおよびます。水分の摂り過ぎで余分な水分が体内に滞るために、筋肉や関節が冷えて、むくみやだるさ、痛みを招くのです。とくに汗をかいたあとに冷房で冷えたり、長い時間、手足を冷気にさらしたりすると、とたんに四肢がだるく感じられます。湿気が筋肉や関節にとどまると、筋肉や関節が縮んでしまいこむら返りや関節痛を起こすこともあります。梅雨時などに腰痛を起こしたり、首を寝違えたりする人が多くなるのも「湿邪」の影響です。

 

東洋医学の考え方で、夏を健康に過ごすための食べ物は、「体を冷やす」食べ物を取ることよりも、夏は熱がこもりやすいので、「体内の熱を冷ます」食べ物を取りましょうと言うことになります。体内の熱を冷ます食べ物の代表が、「苦味」の食材です。それと苦味には、物を下におろす作用(消化作用)があります。まさに夏の一杯のビールは、その代表と言えますね。
ふきのとうやうどのように、まだ肌寒い春先にとれる苦味は、体を温める温性の食材が多いのに対し、夏にとれる苦味の野菜は、寒涼性のものがほとんどです。これら苦味のある食物は、強心、消炎、止血、解熱、鎮痛作用があり、体内の熱を冷まして、夏にオーバーヒートしやすい「心」の高ぶりを鎮める効用があります。逆に働きすぎで疲弊した「心」を補い、正常に戻す作用もあるとされます。
夏の炎暑に苦味のホップが入ったビールが喜ばれ、鹿児島や宮崎、沖縄などの南の地域でゴーヤ料理が郷土食として食べられるのも、暑気を避ける生活の知恵といえるのです。

 

○胃腸を冷やす苦味の食材
体内の熱を冷ます夏にふさわしい苦味の食材ですが、摂りすぎると胃腸を冷やす食害があります。気温が低くなる秋冬はもちろん、冷え性の人や胃腸の弱い人も摂りすぎには注意が必要です。「胃は湿を嫌い、燥を好む」ため、冷やしすぎは機能の低下を招きます。苦味による胃腸の冷えを未然に防ぐため、苦味には温める作用がある辛味の食材を組み合わせるのです。
しょうが、唐辛子、からし、わさび、ねぎ、しそ。これらスパイスや薬味といわれる食材は、すべて辛味に属します。スパイスの利いたカレーを食べると、顔から汗が出てくるように、辛味成分は体を温めて、体内にこもっている熱気や余分な水分を発散して体温を調節する効果があります。同時に、大腸や呼吸器を活性化させる働きもあるので酷暑のインドで、カレーが常食されるのも、暑さから体を守るための食習慣にほかなりません。たっぷり含まれている辛味が胃腸を温め、食欲を増進し、発汗を促すため、胃腸が疲れやすい夏場にはぴったりです。

 

○旬の食材で体の熱を冷ます
苦味のほかにも体の熱を冷ますのに最適なものが、スイカやトマト、きゅうり、なす、メロン、冬瓜など、夏に旬を迎える食材です。夏が旬の野菜や果物には、胃腸の働きを補い、体の熱を冷ます作用があります。たとえば、なすは「脾・胃」を補う甘味に属し、体を冷やす寒性の食材です。「秋なすび嫁に食わすな」ということわざがありますが、これは、「なすは体を冷やす作用が強いため、これから子どもを産む嫁には食べさせないほうがよい」という姑の思いやりを表したものです。ここでいう秋とは旧暦の九月頃のことで、現在の八月をさします。暑い季節には、体を冷やす寒涼性の作物が、自然に作られるようになっているのです。まさに夏の食材は、暑さから体を守ってくれるのです。水分が多く含まれる夏野菜や果物は、のどの渇きを癒すのにも最適です。汗として流れ出た水分を補充すると同時に排尿を促し、体内の水分代謝を高める効果もあります。汗と一緒に排出されるビタミンやミネラルを補うこともできます。暑さでのどが渇いたときは、冷たい清涼飲料水を飲むよりも夏野菜や果物を摂れば、体に栄養を与えながら水分補給ができるのです。私は、トマトが食べられないのですが、なぜかトマトソースは食べられます。以前母が言っていたのですが、子供のころはよくトマトを食べていたそうです。そのことを考えると、胃腸が弱く、冷え性の私は知らず知らずに体が冷える生トマトを食べず、温めて食べるトマトソースは食べていたのかもしれません。

PowerPoint プレゼンテーション

 


昭和堂薬局 | 2015年6月29日

 

夏の養生訓

 

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 子供たちの夏休みが始まる頃、私たちは夏を感じますが、今年の二十四節気では5月6日の立夏から自然界は春から夏へと変化し、6月22日が夏至にあたり昼間の長さが一番長くなる頃で、暑さのピークを迎えるのは7月23日の大暑となります。
 春から夏にかけて気温が上昇するように、夏になると私たちの身体や血を動かしている陽気も盛んになるのですが、日本は島国で周りを海で囲まれているため湿度が高く、最近ではヒートアイランド現象や温暖化などで年々暑さが厳しくなっており、室内はエアコンで冷えやすくなっていますので、体温調節が非常に難しくなってきています。

 上手に夏を過ごすことが難しい環境となりますが、この時期の養生が秋~冬の体調に大きな影響を与えるといわれています。

 

「万物は春に生じ(誕生)、夏に長じ(成長)、秋に収め(収穫)、冬に蔵す(貯蔵)」

 

 夏は成長の季節ということになります。
 夏は陽気が盛んになるため大量の汗をかき、身体にとって必要な水(東洋医学では津液といいます。)が減少する時期で、水分の補給は大切ですが、あまり冷たくないものをこまめにチョコチョコと飲むのが基本です。
 口の中や喉は外気に触れることが多いため暑さを感じて、冷たいものをついつい飲みたくなりますが、喉より先にある臓腑は冷えてしまうとその機能が低下してしまい、身体にとって必要な気・血・津液が作られなくなり、夏バテの原因となるため、冷たすぎるものの摂り過ぎは注意しなくてはなりません。
 また、夏の湿度も胃腸機能を低下させます。この時期に味の濃いものや油の強い食べ物はさらに胃腸機能を低下させ、食欲を落とし、身体を重だるくさせます。
 人間も自然界の変化に従って、適度に汗をかき、体内の陽気が皮膚を通じて外界に発散するように心がけるべきです。
この“陽気”をうまく発散しないと、身体は暑さを感じ始め、冷房や冷飲を好むようになり、これを夏中続けると下痢をするようになります。また、夏に陽気を発散しないと胸に熱がこもります。
 胃腸が冷えて胸に熱がこもると食欲不振や下痢になりやすくなるため、普段から苦味と酸味のものを適度に食べるのがよいとされています。苦味は心に入り、心の陰気を補い、涼血の働きと暑気を払う作用があります。
 甘味は湿気を助長し、多く食べれば脾(胃腸)を傷めるため、甘味は控えめにし、酸味を加えると、食欲が改善され、夏の倦怠感がとれます。

 

貝原益軒の「養生訓」でも
 「夏は、“陰気”が腹中に沈んでいるため消化が遅い。それゆえ、多く飲食してはいけない。温かい物を食べて胃腸を温め、冷水をできるだけ避けた方が良い。生もの、冷たいものは避けること。冷麺をたくさん食べないこと。脾胃(胃腸)が虚弱な人は、とりわけ下痢に注意すべきである。」としています。
 中国の古書の一つである「千金方」は「冬温かなることを極めず、夏涼しきことを極めず」と教えています。

 

 季節にあった養生を少しでも実践することで夏を上手に乗り切りましょう。
 どうしても難しいという方は漢方薬の力を借りるのも一つの方法です。店頭にてご相談ください。

(ポルタ店店長 佐藤直哉)


昭和堂薬局 | 2015年6月1日


横浜ポルタ内にある漢方薬局。あなたの健康な体を取り戻すお手伝いを致します。