『昭和堂薬局』

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もうすぐ立冬を迎えます~東洋医学から考える冬の養生~

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 「春は生じ、夏は長じ、秋は収し、冬は蔵する。」
中医学では四季をこのように捉え、それぞれの特徴にあった養生法を考えます。
立冬の時期は秋から冬への季節の変わり目で、昼夜の温度差、寒暖差が大きくなり急な冷え込みなどによって体調を崩しやすく、一年のうちで最も病気にかかりやすい時期とされており、その後、本格的な冬に入ると厳しい寒さによって陽気が抑えられ、陰が盛んになる時期となります。
万物が静かに落ち着いている「陰」の季節にあたり、この季節は活発な活動でエネルギーを消耗することは避け、「蓄える」ことを第一にゆっくり過ごす時期と考えましょう。

 

 中国伝統医学の古典の一つである「黄帝内経」に「冬の3か月は、これを閉蔵といい、水は凍り、地は凍って裂ける。人は陽気をかき乱してはならず、早く寝て、遅く起き、必ず日光を待ってすべきである。」とあり、江戸時代の儒学者である貝原益軒も「養生訓」で「冬は心を静かに安定させ、衣服を多く重ねたり、あるいは火で身体を温め過ぎてはならない。力仕事をして汗をかき、“陽気”を漏らしてはならない。」と教えています。
文中の「早寝遅起き」は睡眠時間を増やして身体の陽気を養うことが目的であり朝寝坊を勧めるわけではなく、日の出の時間を基準に起きるのが良いといわれています。

 

 どちらも冬は平静に落ち着いて過激なことは慎みましょうということを教えています。

 また冬の寒さは自然界の六淫の一つである「寒邪」となって身体に侵入し、様々な不調を引き起こす原因にもなるので注意が必要です。寒邪の侵入によって身体が冷やされると、感冒や関節の冷えや痛み、四肢の冷えなどの症状が現れます。
冬は陰陽五行説において「腎」との関係が深く、「腎」は生命維持の根源となる“元気”や“精”が貯蔵されている臓であり、成長や発育、生殖などと深く関わる大変重要な臓器とされているため、大事にすることが必要となります。
 腎の働きが活発であれば生命力も強くなり、元気に冬を乗り切れるのです。
食べ物に関しては、「立冬補冬」という食習慣があり、「補」は食べ物によって体調を補うことを言い、冬の寒い時期に育つ食物を、寒い季節に合った調理方法で食べることが健康な身体を育て、維持し、病気を未然に防ぐ最良の方法としています。

 

【体を温める効果のある食べ物】
生姜・唐辛子・かぶ・かぼちゃ・ねぎ・にんにく・たまねぎ・にんじん・ごぼう・にら・赤身の肉・卵など
季節にあった養生を少しでも実践することで冬を上手に乗り切りましょう。

 

 どうしても難しいという方は漢方薬の力を借りるのも一つの方法です。店頭にてご相談ください。

(ポルタ店店長 佐藤直哉)


昭和堂薬局 | 2014年10月28日

 

ホントにうつなの?

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 最近、メンタル疾患の相談が多くなっている気がします。
 「メンタル疾患が多くなっているのは、今に始まったことでない!」といわれそうですが、最近更に増えている気がします。精神疾患の診断基準が19年ぶりに変わったばかりで、その境界線の判断が難しくなったとも言われています。

 

 思い出したのが2年前に読売新聞に載っていた「おかしな医師たち」というコラムです。その一部を紹介します。

 

 「社会不安障害(社交不安障害)は完治します! 薬で完治します!」
 社交不安障害の治療をテーマに、製薬会社が主催したマスコミ向けセミナーで、講師を務めたクリニック院長はそう連呼した。この「薬」とは、SSRI(抗うつ薬)を指す。2009年10月、SSRIのパキシルが社交不安障害の治療にも使えるようになったことを受けて、院長が臨床での使用経験をマスコミに披露したのだ。
 社交不安障害は、人前で話をしたり、人と食事をしたりする時に、強い不安や恐怖に駆られる病気だ。「恥をかくのではないか」という不安が大きくなり、手足の震え、動悸、赤面、尿意などの症状が現れる。このような状況を避けようとして、日常生活に支障を来たすこともある。だが、過度の緊張で失敗することは誰にでもあるため、過剰な診断や投薬の恐れが懸念されている。
 SSRIが社交不安障害に効く仕組みは解明されていないが、脳の扁桃体などに作用して、不安感の暴走を抑える働きがあると考えられている。ただ、薬はあくまで対症療法で、完治のためには人前で場数を踏み、自信をつけることが欠かせない。その過程で、認知行動療法や森田療法などの精神療法が効果を上げることも多い。
 セミナーでは、この院長の暴走が続いた。
「なかなか結婚できない男性は、社交不安障害の可能性が高い」
「受験で緊張する学生は、試験前にぜひ薬を飲んで欲しい」
 一体、何百万人を患者にするつもりなのだろうか。集まった記者たちは唖然とし、厳しい質問を浴びせた。
「精神科医が薬を使い過ぎることに批判が高まっている。どう思うか」
「この薬の効果は、偽薬とあまり差がないように見える」(偽薬とは、小麦粉などでできた薬効のないニセ薬のこと。薬を飲むという行為だけで安心する人もいるため、偽薬でも本物の薬並みの効果が現れることがある)
 それでも院長は「薬が効きます。完治します」と繰り返すばかりだった。
 SSRIは様々な副作用が報告されている。若い人が服用すると、感情の高ぶりや自殺企図などの恐れもあることは以前ふれた。試験前に安易に飲むような薬では、決してない。
 「試験は緊張してあたり前」「周りもみんな緊張している」「失敗は成功のもと」。受験生に必要なのは、薬よりもまず、そうした当たり前の助言だろう。
 突然、病気の疑いをかけられた「結婚できない男たち」のことも忘れてはならない。彼らの気持ちを、ここで代弁させていただこう。
「大きなお世話だ!」

 

以上が2年前に読売新聞に掲載されたコラムの抜粋です。
 すべての精神科医がこうだとは思いませんが、心の病の診断は難しいのだろうと思います。しかし、私のところに相談に来る方々は精神科や心療内科に通っているものの治らない人がほとんどで、私見となりますが、薬の種類や量がどんどん増えていったり、うつ病と言われて納得していない人など、その治療方針や薬に不満があるようです。実際、この人ホントにうつなの?と思う人もいます。

 

 東洋医学で鬱(うつ)証は、身体にとって不要なものが存在する「実証」と身体にとって必要な物質が不足している「虚証」に分けます。関連する臓は、「肝」・「心」・「脾」です。相談に来られる方は虚証の方が多い様です。年齢的に若い女性は「脾」(≒胃腸)が弱く元気ややる気といった「気」の生成不足によって気分を上げられないために欝証になっている場合が多く、50歳前後の人は「心」にとって必要な物質が不足して、「心」の中に存在する「神明」(≒高次神経や意識・思考)の安定ができないために起こる心陰虚が多いと思われます。

 

 生活環境などの違いで単純に判断することはできないのですが、東洋医学に基づいて治療を進めていくと、少しずつ改善していきます。
あくまでも私見ですが実証タイプの人はお医者さんの薬が効く人が多く、虚証の人はあまり効かないのかもしれません。
精神科や心療内科に通院しているが良くならない方は東洋医学を用いて本来の自分を取り戻してみませんか。


昭和堂薬局 | 2014年10月10日

 

やすらぎ通信

 

やすらぎ通信(平成26年秋彼岸)表やすらぎ通信(平成26年秋彼岸)裏

今回、横浜日野にある善光寺さんからの依頼で、井上家のお墓があるやすらぎの郷霊園の「やすらぎ通信」にコラムを掲載したのでご紹介します。

 

◆仏教と東洋医学

 お釈迦さまは医者の王様の意で、医王と言われることがあります。
 『医王の目には百草みな薬なり』と言われる事もあり、お釈迦さまが薬草に関する知識を利用して多くの人々の病気を診ていられたあります。
 仏教では、心身一如(しんじんいちにょ)といわれ、身体と心・精神は分けて考えることはできません。体と心のバランスを保つという意味で、仏教と東洋医学は似通っている点があるのではないかと思います。身体と心の健康について学んでいきたいと思います。

 

1回 ~東洋医学的身体のバランスとは~

◇陰と陽

 東洋医学では身体のバランスを示す“ものさし”の一つに「陰」と「陽」があり、世の中に存在するすべてのものは、この「陰」と「陽」との二つの要素から成り立っていると考えています。
成長と老化-2-2 天は陽・地は陰、熱は陽・寒は陰、夏は陽・冬は陰、男は陽・女は陰といった具合です。この陰と陽の関係は相手がいなければ自分もいない、例えば「天」がなければ「地」はありません。逆に「地」がなければ「天」もありません。お互いに協調し合い、ときに相手を抑えたり、ときに抑えられたりしています。陰が強く雨ばかりでも、陽が強く晴ればかりでも豊かな実りは得られません。この様に陰陽は変化し合いながらバランスを取っているのです。
 人は、男女の交わりで生まれます。具体的にいうと陽である男性の精子と陰である女性の卵子が交わることで新しい命が生まれてきます。
 これとは逆に、人の死とは陰と陽の交わりが無くなり、陰陽が乖離してしまうことで、人は亡くなっても物質(陰)はそのままで、エネルギーである気(陽)が無くなった状態なのです。そして、身体から離れていった陽気が三途の川を渡っていくのではないでしょうか。この先は善光寺さんお任せします。
これを踏まえて考えてみると、人間の健康とは一体どんな状態なのでしょうか。

 

◇健康とは

 体の働きを「陰」と「陽」でみると、基本となる陰は物質、陽は機能と捉えることができます。機能である陽の働きは物質代謝やエネルギー代謝、成長などで、陰である物質は機能を支える物質(例えば血)です。この陰陽のバランスが保たれていると健康といえるのです。このバランスが崩れることにより人は病気となってしまいます。
 では、陰陽のバランスの崩れとはどんな状態なのでしょうか。
 なんらかの原因により、陰陽のどちらかが強くなる、もしくはどちらかが弱くなって起こります。簡単にいうと陽が強くなる、または陰が弱くなると熱症状が起こります。陽が弱くなるまたは陰が強くなると冷え症状が起こります。

 

◇自然のバランス

 この陰陽のバランスの崩れが自然界で起こっている事柄として地球温暖化が挙げられるでしょう。これは環境破壊などでオゾン層が薄くなり陽である日差しが強くなったことや陰である地表をアスファルトで覆い隠してしまった事による地球の熱症状なのです。
 しかし、自然界もこの状態を元に戻そうとする力があります。熱せられて乾いてしまった地表を潤す雨は人間が利便性だけを追求し作り上げたこの異常な状態を戻そうと過剰反応を起こし、その結果ゲリラ豪雨や集中豪雨という形で天災という災害(病気)を生んでいるのではないでしょうか。

 

◇先人の知恵

成長と老化-2-1 人間もだんだんと年をとっていくと陽であるエネルギーが不足し始めます。そこに冷房や冷たい物の摂り過ぎで陽を損傷して冷えが起こり、いろいろな病気が起こってくるのです。
 日本には、“年寄りの冷や水”という諺があるように、だんだん年を重ねていくと冷えるような行為は慎まなければいけないのです。
 日本には四季があり、四季折々の食べ物があります。その食べ物にも体を温めるもの、体を冷やすものがあります。簡単にいうと夏採れるものは体を冷やし、冬に採れるものは体を温めます。しかし、現代ではスーパーの店頭で季節を感じられなくなっていますよね。冬でも夏野菜のトマトやキュウリ、なすなどが店頭に並び、日本料理のお店でも冬のメニューに普なすを使った料理が出ることもあります。このような食事は陰陽のがランスから見ると違和感があります。
 「なすを食べる時は生姜を添える。」これは、夏になすで冷えすぎないために生姜を添えて陰陽のバランスをとっている先人の知恵。冬はもともと寒くて体が冷えているのに、更に体を冷やす食材をとってバランスを崩すこともないかと思います。その様な見方で生活習慣を振り返ると意外に体を冷やしている事に気がつきます。先人の知恵、日本の伝統食を見直して元気な生活を送れるようにしたいですね!


昭和堂薬局 | 2014年9月18日

 

運動が体にいい理由 その2

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適度な運動を続けていくと、身体は大きな変化をしていきます。
簡単にその変化を紹介すると…

 

神経系
運動によって認知機能が改善します。有酸素運動は特に高齢者の組織力や計画能力、注意力を改善します。
免疫系
定期的な運動は体を炎症から守ります。しかし、過剰な運動は病原体から体を守る免疫力を弱める恐れがあります。
骨格筋
ウエイトトレーニングとバランス運動によって骨折や転倒を予防できます。有酸素運動で筋肉の効率が上がり、日常の疲労が軽減されます。
遺伝子への影響
身体活動レベルの変化によって特定の遺伝子のスイッチがオン・オフされることがわかってきました。その影響は多くの場合、穏やかなものですが広範囲の細胞で起こります。
内分泌系
運動は体のインスリンへの反応を改善し、別のホルモンであるアディポネクチンの量を上昇させます。これらの結果、糖尿病やメタボリック症候群のリスクを減らします。

 

もう少し具体的に運動が認知機能や心血管系、糖尿病にどのような影響をもたらしているのかをみることにしましょう。

 

運動によって集中力や思考力、判断力が高められることがわかってきました。これは、60代70代の120人を対象とした調査により、脳の海馬という記憶をつかさどる領域が大きくなることが示されました。この海馬という部分は神経細胞が生まれ変わることが出来る部分で、その後、動物実験では新しい神経を成長させる脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が運動により高められることが示されました。この運動による脳の変化が認知機能に影響していたのです。

 

以前から、運動により心血管系のリスクが減ることは言われていました。これまではこの血管系には、運動により血圧が下がり、血中のHDLコレステロール(善玉コレステロール)は増え、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が下がることによると考えられていましたが、運動によるこれらの効果は非常に時間がかかることがわかってきました。また、LDLは濃度の高さよりもLDLの大きさが重要であることがわかってきました。この変化は、運動によりリポたんぱくリパーゼという酵素が脂肪組織や筋組織で活発に働くようになり、LDL分子の大きさを小さくしているようです。これは、コレステロール値が同じ人でも運動量が違えばリスクも違うということです。

 

もう一つが、血糖値に対する作用です。運動が習慣になると、骨格筋に負荷が増え、エネルギー源としてブドウ糖が必要になります。長期的には運動により骨格筋の筋線維がブドウ糖をより効果的に利用できるようになり、筋力が増します。また、運動が日常的に行われるようになると、筋肉はインスリンに敏感に反応するようになり、少ないインスリンでも血糖値が抑えられるようになるのです。

 

現代人の飽食と運動不足は、肥満の増加の原因として社会問題化しています。食べるものはいくらでも手に入り、交通機関が発達したことでほとんど歩かなくても生活できる世の中です。運動は少しの工夫でできるものです。ジムに行かなくても通勤や買い物の時に乗り物ではなく歩いてみるのも良いのではないでしょうか。

 

参考図書;日経サイエンス2014年7月号


昭和堂薬局 | 2014年9月1日

 

運動が体にいい理由

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 みなさんは、運動が体にいいことは知っていると思います。
では、「どう体にいいのか」「どんな運動をするといいのか」ということまで認識している方は少ないのではないでしょうか。

 アメリカの大規模調査に基づく「米国運動ガイドライン」の最新版(2008年発表)では、早歩きなどの穏やかな運動を少なくとも1日30分間、週5日以上、あるいはジョギングなどの激しい運動を週75分間、それに加えて30分間の筋力トレーニングを少なくとも2日行うことを推奨しています。

 有酸素運動は筋肉が必要とする酸素を著しく高めるタイプの運動で、肺の活発な働きが求められます。一般的にはこのタイプの運動が健康にいいと言われています。しかし、ウェートトレーニングやバランストレーニングなど、動きの少ない運動にもそれなりの効果があります。
 
 では、どのぐらいの運動が穏やかな有酸素運動で、どのくらいからが激しい運動なのでしょうか。簡単な見分け方としては、「会話テスト」があります。

 穏やかな運動を始めると、心拍数が上がり呼吸が荒くなってきます。体を動かしながら会話や歌が歌えるうちは、まだ穏やかな運動といえます。しかし、一度に一言二言しか発せられなくなると激しい運動です。

 運動をしていくと、神経系は体の器官を活発にし、意識が鮮明になり、心拍数が上がり、呼吸が速まり、軽く汗をかき始めます。それと同時に筋肉の血管が拡張し、酸素を豊富に含む血液が筋肉に行き渡るようになります。

 筋肉細胞に入った酸素は、ミトコンドリアという器官に取り込まれ、そこで酸素を使って食べ物から消化分解されて作られるブドウ糖からエネルギーを作ります。この酸素を使ってできるエネルギーは酸素を使わなかった時の約20倍のエネルギーになります。

 また、運動を続けていくとブドウ糖の在庫がなくなり、脂肪が燃焼されるようになります。こうした体内での燃焼が起こると、乳酸や二酸化炭素などが発生し、これらが血液に入って濃度が上がってくると脳や肺、心臓でさらに生化学反応がおこり、老廃物の除去がより効果的に進むようになって体の負担を減らします。

 運動が日常的になると、大きな負荷に体が順応してスタミナが増します。1回の呼吸で多くの酸素を取り込み、1回の心臓の拍動で多くの血液を送り出すようになります。こうした変化は米国のガイドラインくらいの運動を数週間続けていくと現われ、健康増進につながります。

 次回は、もう少し詳しく運動が体にどんな作用を及ぼすのかをお話したいと思います。


昭和堂薬局 | 2014年8月22日

 

血糖値高いと認知症リスク増

 産経新聞に糖尿病と認知症の関連について記事が掲載されておりましたので、紹介させていただきます。

以下記事
 米国ワシントン大学医学部のポール・クレイン博士らの研究グループは、1994~96年および2000~2002年に被験者として登録した、認知症でない65歳以上の高齢者2067人を平均6.8年にわたって追跡調査し、糖尿病と認知症の発症の関連について調べた。
 登録時に糖尿病と診断されていた人は232人、糖尿病でない人は1835人だった。このうち、調査期間中に認知症を発症したケースは、糖尿病群で74人(母数に対し21.6%)、非糖尿病群で450人(同26.1%)だった。つまりクレイン博士らの調査では、糖尿病でない人の方が、若干ではあるが認知症を発症しやすいという意外な結果が出たのだ。
 更にクレイン博士らが血糖値と認知症の発症リスクについて検証すると、興味深いことに血糖値が高ければ高いほど認知症の発症リスクが高まり、低ければ低いほど認知症の発症リスクが低下することがわかった。
 つまり、糖尿病を発症していない人について認知症の発症リスクを調べると、一日の平均血糖値が100mg/dlの人の認知症の発症リスクに対して、105mg/dlの人の発症リスクは10%増加、110mg/dlの人の発症リスクは15%増加、115mg/dlの人の発症リスクは18%増加していることが分かった。逆に、一日の平均血糖値が95mg/dlの人の認知症の発症リスクは14%低下、95mg/dl以下の血糖値では更に認知症の発症リスクは低下していた。
 一方、糖尿病を発症している人について一日の平均血糖値と認知症の発症リスクの関係を調べると、一日の平均血糖値が160~170mg/dlの場合の認知症の発症リスクが最も低く、それより高くても低くても認知症の発症リスクは増加していることが判明した。高血糖値が認知症の発症リスクを増大させるメカニズムは糖尿病とは別である博士は考察、今後の研究課題だと言えそうだ。

 認知症と血糖値の関係は以前から指摘されており、血糖降下ホルモンであるインスリンは血液の中のブドウ糖をエネルギーとして使われるように変え、ブドウ糖を減らし血糖値を下げます。必要なくなったインスリンはインスリン分解酵素の働きで分解されます。インスリン分解酵素の主な仕事はインスリンの分解ですが、インスリン分解酵素は副業として、アミロイドβの分解もしています。
 慢性的にインスリンが多過ぎる状態(この状態を高インスリン血症といいます。)となるような生活をしていると、インスリン分解酵素はインスリンの分解の為に消費されてしまいます。そうなると、認知症の原因物質であるアミロイドβ(この物質が集まったものが老人斑)の分解が手薄になってきます。
 糖尿病で高インスリン血症の人は、脳にアミロイドβが溜まりやすい状態となっており、その結果として認知症、特にアルツハイマー型認知症を発症しやすくなってしまいます。
 記事の疫学調査で、糖尿病で認知症になった人の割合が少なくなったのは、糖尿病で症状が進んでいくと膵臓でのインスリンが枯渇することがあり、この場合必ずしもインスリンの血中濃度は高くなく、インスリン分解酵素の消費が少ないために認知症になる割合が減ると考えられます。
 つまり糖尿病となっていなくても、インスリンを多く使う生活をしていると、認知症になりやすくなるのです。現代の人達は、甘いものを多く摂っています。ジュースやお菓子が気軽に摂れる世の中です。知らず知らずに認知症の原因を作っているのかもしれませんね。
 このようなことにならないためにはどうすれば良いの?という方は店頭にてご相談ください。


昭和堂薬局 | 2014年7月5日

 

東洋医学から診る熱中症対策

 梅雨明け宣言が待ち遠しいくらい大気が不安定な状態が続いています。この梅雨が明けるといよいよ夏本番となるのでしょうが、気をつけたいのが熱中症。ここ数年多くの方がご心配されていることではないでしょうか?

熱中症のことを東洋医学では”中暑”(チュウショ)と呼び、この”中”は、食中毒の”中”と同じで、暑さに中ったという意味で、暑気あたりのことを指し体内に溜まった熱を放散できず、体温の調節ができなくなった状態で、かつては熱射病、日射病、熱けいれん、熱疲労などと呼ばれていました。
では、このとき身体の中ではどのようなことが起こっているのでしょうか?
東洋医学では高すぎる気温を”熱邪”、特に夏季にのみ存在し高湿を伴う熱邪のことを”暑邪”と呼び、病の原因の一つになるとしています。
それぞれの邪には身体に及ぼす影響に特徴があり、”熱邪”が身体に及ぼす影響は次のようなものがあります。
①熱感があり、身体がほてる、冷たいものを欲する。
②炎上性がある。具体的にはのぼせや目が赤い、口やのどが渇く、頭が割れる様に痛むなどの症状があらわれる。
③神明をおかす。熱邪は精神や意識に障害を与えることがあり、暑くてイライラする、暑くて眠れないなどの現象は熱邪によって神明が影響を受けており、甚だしい場合は意識の混濁や失神等の症状があらわれます。
④毛穴を開泄して大量の汗を出し、必要以上の汗を出すために身体にとって必要な水分(津液・しんえき)を消耗する。またこの際に汗と共に”気”と呼ばれるエネルギーも放出してしまうために疲れやすい、だるいなどの症状をあらわします。
⑤発疹ができたり、出血したりする。具体的な症状としては、あせもや赤い湿疹ができたりアトピー性皮膚炎が悪化したりする。発疹部位から出血したり、熱邪の影響で鼻血がでたりすることです。
⑥けいれんする。熱邪が極まると”内風”という現象が起こります。”内風”とは身体の動きを伴う症状で、具体的には震え、眩暈、痙攣、しびれ、ひきつけ等の症状を指します。
熱中症はこの”熱邪”によって身体が犯されていると捉えています。
では、熱中症に対し東洋医学はどのような対策をしていくのでしょう。
端的に表すと、”身体から排出するもの・失ってしまうものと身体の中に入るもののバランスをとる”ことです。
夏の暑さにより発汗量や呼吸により失うものと、補充するもののバランスをしっかりとれるような漢方が必要ということになります。
水分が失われるので、水分補給や摂取量を増やせばいいのではないか?と思われる方がいらっしゃいますが、実際に汗として排出されるものは単なる水ではなく、あくまでも”津液”と呼ばれる体液です。
失われた”津液”をしっかり補い、補充することが必要になります。
具体的にこの”津液”を補うためにはどうすればいいのでしょうか。
簡単にできる方法としては、ミネラル補給できるスポーツドリンクなどに「麦味参顆粒」や「麦門冬湯」などの体に潤いをもたらす漢方を溶かして服用するのが効率の良い”津液”の補充方法です。
また、夏場は冷たいものの摂取過剰によって胃腸機能が低下し、体内の水分バランスを崩し、体が重く、だるくなったり、浮腫んだりします。
このような場合には胃腸機能を回復させて、偏在している水分を体外に排出し、体のバランスを回復させることが必要で「六君子湯」「参苓白朮散」などの漢方薬が用いられ、胃腸が冷えてしまい吐き気やめまい、下痢が続く場合は「扶陽理中湯」や「回陽救逆湯」などを用いて回復させます。
どうしても、お仕事やお付き合いなどで炎天下の下に行かなくてはいけない場合は、「感應丸(かんのうがん)」や「日水清心丸」という強心・清心作用を持つ漢方薬をカバンの中に入れておき、なんとなく変だなと感じたらすぐに服用できるようにしておくと良いでしょう。
ご自身でできる熱中症対策もあります。ポイントは単純なことで、体に冷えを溜め込まないこと。そして、もし溜め込んでしまったら早めに解消することです。
具体的にはどうすればいいのでしょうか。
答えは、朝一番とお休みになる前は冷たいものを避けて、温かいものを摂取すること。そして、寝ている間にお腹を冷やさないようにすることです。
また水分補給をする際は、一度に大量の水分を摂るのではなく一口ずつ少量の水分をちょこちょこと飲むことです。
これは一度に大量の水分を摂ることで一過性に胃酸が薄められ、身体の恒常性(一定を保とうとする働き)によって胃酸が大量に分泌され、胃粘膜が障害されてしまうのを防ぐためです。
東洋医学の知恵を用いて、夏を元気に過ごしましょう!
どんな対策をしたらよいのかわからない?!という方は、店頭にてご相談ください。
スタッフ一同、ご来店をお待ちしております。


昭和堂薬局 | 2014年6月29日

 

東洋医学から考える梅雨の過ごし方

 梅雨の季節が大好きという方はまずいないと思います。ジトジト、ジメジメして、蒸し暑く、洗濯物が乾かない、また急に冷えたりして体調管理が難しいなど、お悩みの方は多いのではないでしょうか。
 ジメジメして蒸し暑いということで身体がだるく感じたり、食欲が落ちたりするのですが、梅雨の季節は、水分代謝を良くしておかないと、いらない水が体内に貯まります。これを東洋医学では湿邪と呼びます。いらない水を上手に出すことを考えなければなりません。ただ湿邪がある人は、水を取るなと言うことではなく、摂取した水分を使い切れておらず、湿邪となっているためで、有効に活用できるような体作りをして、いらない水を体外に排出できるようにしなければなりません。
 湿邪の影響を受けやすいところは、まず皮膚です。次いで筋肉、関節と続きます。体内に侵襲するときには、胃腸も障害します。次に呼吸器系、腎臓と膀胱に及ぶことがあります。また精神面や神経の領域にも重要な影響を持ちます。
 皮膚は外気を最も敏感に感じ取ります。暑い時は汗腺を開き発汗することで体温を下げ、寒い時には反対に表皮を引き締め、体温を逃がさないようにしています。また皮膚呼吸をして、肺の働きを助けています。湿度が高くなると皮膚の持つ様々な代謝機能が阻害され、数々の弊害が表れます。

梅雨と皮膚疾患
 その第一は皮膚呼吸がうまく行かなくなる為に何となく息苦しく感じたり、重苦しく感じたりするようになります。
 皮膚病については、水虫を始めとするジュクジュクと水を持つ皮膚疾患はこの季節に悪化します。反対に乾燥の強いものは良くなることがあります。この季節は皮膚の働きが弱っているのでちょっとした刺激や食べ物で湿疹ができやすく、また紫外線が一番キツイ季節でもあるため、その影響で皮膚病が悪化する場合もあります。この場合には、刺激の少ないUVカットの日焼け止めを使い、大きなツバの帽子をかぶるようにして下さい。皮膚疾患については、悪化するのは早く、治すのには時間がかかります。専門医に相談することも大切ですし、アトピー性皮膚炎などは漢方療法をお考えになるのも良いと思います。

梅雨のお風呂の入り方
 梅雨の季節の湿度により悪化する神経痛や腰痛、膝などの関節痛や、アトピー性皮膚炎などの皮膚病や喘息の方は、養生法として足湯やお風呂で温まりましょう。
 お風呂の入り方は、40度~39度で15分以上お入り下さい。手は心臓のツボが多いですから腕はつけず、おなかから下で結構です。体を温めると水分代謝も良くなります。これらの病気の予防と改善に役立ちます。是非実行してみて下さい。


昭和堂薬局 | 2014年6月18日

 

何となく気になる便秘も要注意!その便秘「むくみ腸」かも?

 産経新聞やマイナビウーマンなどで紹介された「むくみ腸」。実際、便秘薬を使われている方の内、本当の意味で下剤が必要な方は数少ないのではと思います。便秘は、排便しにくい、排便回数が少ない、便が硬い、残便感がある状態です。しかし、漢方的には、センナなどの便秘薬を使っていいタイプは、熱秘タイプ(身体の熱量が多いタイプ)で大便が乾燥し、腹痛やお腹の張りがあり、赤ら顔で小便は黄色く、口臭があり、口が渇くようなタイプで、舌を見ると赤く黄色い厚い舌苔のある人たちです。冷えていたり、エネルギー不足や血の不足、エネルギーが巡らないなどの便秘に長期間センナなどの便秘薬を使用すると、お腹を冷やしてしまい、消化機能を傷害してしまう可能性があります。
 「読む便秘外来」(集英社)など数多くの著書がある順天堂大学医学部の小林弘幸教授は、「めまいや頭痛、便秘といった不定愁訴を起こす例が増えているようです。気圧の変動も大きく、自律神経のバランスを崩しがちです。交感神経が優位になり過ぎると血流が滞り、むくみ、冷えといった症状も起こります」と言っています。
 腸が内容物を送り出す「ぜん動運動」は副交感神経が優位なときに活発になります。腸は脳に次いで神経細胞が集まっており、自律神経のバランスを保つことが大切です。腸内環境が悪化すれば吸収された栄養を運ぶ血流が悪くなり、全身の機能低下へとつながっていきます。「大腸では便に含まれる水分を吸収していますが、その水分が排出されないと腸管がむくみます。これが『むくみ腸』です。腸がむくみを起こせば、血流が悪化してエネルギーの消費も悪くなり、肥満にもつながります」
 小林教授は「便が腸内で滞れば腐敗が進み、おならが臭くなり、次第に口臭や体臭にも現れます。毎日お通じがあっても残便感があるのは、腸がむくんでいる場合があります。まず、大切なのは腸内環境を整える食生活と適度な運動を心がけることです。患者さんにもおすすめしているのがヨーグルト。生きて腸まで届くタイプのビフィズス菌がとれるヨーグルトなら、腸内環境を整えるのはもちろん、便通改善にも役立ちますよ。ヨーグルトをとる際、食物繊維を豊富に含むものを一緒にとると、さらに効果を期待できます。食物繊維は便を柔らかくする水溶性の食物繊維と、腸のぜん動運動をうながす不溶性の食物繊維を同時にとれるのでおすすめです」と小林教授。
 実際に、食物繊維や乳酸菌、オリゴ糖などで大便の出が良くなり、肌の調子などが良くなる人は多くいます。もともと日本人は欧米人に比べ腸が長く、便秘しやすい傾向にあります。そのため、昔の日本人は食物繊維をたくさん摂っていました。しかし、現代人は、欧米型の食事を好むようになり、本来の熱秘タイプ以外の人達も便秘になっているのです。
 食物繊維や発酵食品を摂り、便秘薬に頼らない生活が必要です。
 それでも解消できない方は、その方にあった漢方薬や健康食品をお選びしますので、ご相談ください。


昭和堂薬局 | 2014年6月9日

 

トランス脂肪酸とは

 トランス脂肪酸は、トランス型の二重結合をもった不飽和脂肪酸です。天然の植物油などの不飽和脂肪酸は、シス型の二重結合をもった不飽和脂肪酸でトランス型は含まれません。例外的に、反芻動物(牛、山羊など)の肉や乳に2%くらい含まれます。これは反芻動物がもつ微生物により作られるものです。
 しかし、我々が摂取するトランス脂肪酸は、天然の植物油脂を固めるために水素を付加した時に生成されます。そのため、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどに多く含まれます。また植物油などを加熱することによってもできますので、長期間使用した植物油にも含まれています。
 トランス脂肪酸は構造上直鎖で、シス型脂肪酸は折れ曲がった構造をしています。このためトランス脂肪酸の代謝は、シス型の代謝と違う経路をとるのではないかと言われています。また、脂肪酸は体の中に吸収されるとリン脂質となり細胞膜をつくります。このため、細胞膜を構成する脂肪酸によって細胞の流動性や働きが変化すると言われおり、トランス脂肪酸は、虚血性心疾患や認知機能などに対するリスクが高くなることが言われています。アメリカの疫学調査では、トランス脂肪酸の摂取が多い人は炎症反応を示すCRPなどが高いことが示されました。この炎症状態を慢性炎症といい、慢性炎症は多くの病気の原因であることが最近解ってきました。生活習慣病や脳血管・心血管疾患、自己免疫疾患、アレルギー、がん、認知症などの疾患はこの慢性炎症が原因といわれています。これらのことから、トランス脂肪酸の摂取が多くの病気の原因のなる可能性を示しています。
 おそらく、今の日本の食生活を考えた場合、トランス脂肪酸を全く摂らない食生活は不可能だと思います。しかし、出来る限り減らす工夫は必要でしょう。またトランス脂肪酸摂取により慢性炎症を起こすのであれば、炎症を抑制するようにすることが必要です。炎症を抑制していくためには、ω3系の脂肪酸を摂っていくことです。亜麻仁油やシソ油、魚油のEPAやDHAなどがω3系不飽和脂肪酸です。亜麻仁油やシソ油はドレッシングや料理にかけるなど生で使います。EPAやDHAはサバなどの青背の魚に多く含まれています。しかし、亜麻仁油やシソ油などのαリノレン酸は吸収に個人差があるようです。また、小児の臨床試験でトランス脂肪酸の摂取によって、このαリノレン酸の代謝が阻害されEPAやDHAに変換しにくくなる可能性があることが解っています。慢性炎症が関わる病気の人などはEPAやDHAを積極的に摂る事をお勧めします。


昭和堂薬局 | 2014年5月26日


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