『昭和堂薬局』

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明けましておめでとうございます

通信40号

 

明けましておめでとうございます。本年も変わらぬご愛顧よろしくお願いします。

昨年末に「やすらぎ通信」が出来上がりましたのでご紹介いたします。

 

 このコラムも6回目を迎えます。前回迄は『陰と陽』、『四季の養生法』についてのお話でした。
 今回は養生の考え方から『風邪の対処法』と『お正月の伝統行事』についてお話します。

 

 中国伝統医学の古典黄帝内経(こうていだいけい)では養生の原則を下記のように示しています。『外からの邪』と『内からの邪』を回避する事により病気を防ぐようにすべきとの教えです。
「古代の修養の道理を深く理解した人は、人々を教え導くにあたって常にこう述べたものです。『外界の虚邪賊風(きょじゃぞくふう)に注意して回避すべきときに回避すると共に、心がけは安らかで静かであるべきで、貪欲であったり、妄想したりしてはならない。そうすれば真気が調和し、精神もまた内を守ってすりへり散じることはない。このようであれば病が襲うということがあろうか』と。そのため人々の心はきわめて閑かで、欲望は少なく、心境は安定していて、恐れることはありませんでした。肉体を働かせても過度に疲労することはなく、正気は治まり順調だったのです。それぞれの望むところは満たされ、食べ物をおいしく思い、着たものを心地よく思い、習わしを楽しみ、地位の高低をうらやむことがなく、人々はいたって素朴で誠実でした。正しくない嗜好も彼らの耳目をゆりうごかさず、淫らな邪説も彼らの心情をまどわすことはなかったのです。愚鈍、聡明、有能または不肖な人を問わず何事に対してもまったく恐れることはありませんでした。してみると彼らがあらゆる点で、養生の道理に合致していたことがおわかりでしょう。だから皆が年百歳に達することができて、しかも動作にも少しも衰えたところがなかったのです。これは彼らが養生の道理をすべて掌握していたからであり、こうであってはじめて疾病の危害を召かずにすむのです」。

 

 今の我々を取り巻く環境を見てみると、「あれ?」と思うこと多くないですか?例えば冬に夏野菜がスーパーの店頭に普通にあったり、冬でもアイスクリームを食べている人がいたり…。
 また逆に夏にクーラーで体を冷やしすぎてカイロを付けている人はいませんか。よくみると案外一年を通して季節感がない事をしているのに気がつきます。
 本来、夏は汗をかき冬は汗をかかないものです。春・夏は陽の季節、秋・冬は陰の季節です。近年は地球温暖化などいわれていますが、基本的にはこの原則は二千年前と変わっていません。春・夏は陽気が盛んですから汗をかいて熱を発散してあげなければいけません。しかし、秋・冬は陰が盛んで汗をかいてエネルギーを出してはいけないのです。冬は汗が出るほど暖房をしてはいけないのです。汗をかいてエネルギーである『気』が不足すると、バリア機能が衰えてその隙に寒邪が入り寒気がするような風邪を引いてしまいます。

 

●風邪の対処法

 風邪には風寒邪、風熱邪と風湿邪があります。
 これらの特徴として、風寒邪は寒気、風熱邪はのど痛、風湿邪は下痢・吐き気となり、冬に多い風邪は風寒邪となります。寒邪には、ものを収縮させる性質があるため血管が収縮されて気血の巡りが滞り、手足の冷え、悪寒、節々のこわばりや痛みを起します。毛穴も収縮するため、体の中の熱を外へ放出できなくなり、汗が出ないで悪寒発熱をするようになります。このときは風寒邪を追い出す葛根湯などを使います。葛根湯は有名ですからご存知の方も多いと思います。
 傷寒論という古典に「太陽病、項背強張ること几几(きき)、汗無く悪寒するは、葛根湯これを主る」とある通り寒気がして体の節々が痛み、汗をかいていない風邪の初期に使う処方です。
 漢方薬の特徴は、自然治癒力(自分で病気を治す力)を高めて、免疫力を上げて速やかに治す作用があります。風邪を引きそうな時に早めに飲んで風邪を引かずにすむことが出来ます。しかし、体が弱っている人は、寒邪に侵されても毛穴を閉める力が皮膚にない人もいます。
 じっとり汗が出ていて寒気や発熱が出そうと言う人は、葛根湯を飲んではいけません。この時葛根湯を飲むと風邪が返って悪化する場合もあります。このような人は桂枝湯という薬になります。風邪ならば何でも葛根湯ではないのですよ。

 

●お正月の伝統行事
 お正月の伝統的な行事には、それぞれ意味があります。昨年は『おせち料理』についてお話したので、今回は『お屠蘇』、『鏡開き』、『七草粥』についてお話します。

 

御屠蘇(おとそ)
 日本には元旦の朝、家族一同がそろって屠蘇酒を飲む風習があります。1年間の長寿健康を祈願する慣わしです。数種類の生薬を調合した屠蘇散を、清酒やみりんに一晩漬け込むお祝いのお酒です。諸説ありますが、屠蘇とは「邪気を屠(ほふ)り、心身を蘇らせる」ところから名付けられたと言います。悪鬼・疫病を治し、邪気・毒気を払うとされて、「一人これを呑めば一家病無く、一家これを呑めば一里病無し」と言われ、日本の正月の膳などに呑まれます。

 

鏡開き(かがみびらき)
 鏡開きは、一般的には、歳神様へのお供えが松の内(1月7日)に終わった後、1月11日に行われます。お供えしてあった鏡もちを手や木槌で割る正月行事。正月、神様は全ての人や物に新しい生命を与えるために現れると伝えられています。つまり、「歳をとる」ということは一年に一度新たに生まれ変わるということだったのです。そして、その歳神様の霊力を移しとる道具が鏡餅でした。この鏡餅をお供えし、そのお餅を食べることによって、私たちは新しい生命を歳神様から頂くことが出来ると考えられてきました。1年の無事を感謝する気持ちを込め、更に新年の健康を祈る気持ちは非常に歴史のある日本人固有の文化といえますね。

 

七草粥(ななくさがゆ)
 正月7日の朝、七草の入ったお粥を食べて無病息災を願う風習です。その歴史は古く平安時代から伝わる風習です。江戸時代より一般に定着し江戸幕府の公式行事となり、将軍以下全ての武士が七草粥を食べて『人日(じんじつ)の節句』を祝う慣わしとなりました。
 人日とは、文字通り “人の日” の意味。中国、前漢の時代、東方朔(とうぼうさく)が記した占いの書には、『正月1日に鶏、2日に狗(いぬ)、3日に羊、4日に猪(豚)、5日に牛、6日に馬、7日に人、8日に穀を占ってその日が晴天ならば吉、雨天ならば凶の兆しである』とされていました。また、それぞれの日にその動物を殺さない風習があります。7日目を人の日(人日)とし、犯罪者に対する刑罰は行わないことにしていました。ですから、7日の人の日には邪気を祓うために、七草の入ったお粥を食べ、一年の無事を祈ったのだともいわれています。
 

 七草粥に入れるのは、いわゆる春の七草。初春の野から摘んできた野草の生命力を食して、邪気を祓うということでしょうか。古来、宮中や神社でもこの日七種の野草を摘む行事を “若菜摘み” といい、多くの歌に詠まれたり、能楽(のうがく)のワンシーンとしても登場しています。でもお正月には、まだ野草は芽吹いていないのでは?と思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。でも旧暦でのお正月は、現在の2月頃。まだ寒さも厳しいながら、陽射しには春を感じる頃です。長い冬が終わりに近付き、野に出て春いちばんの息吹きを持ち帰る、七草粥の行事は新しい年が始まる喜びの行事だったと想像できるのではないでしょうか。
そして現代の私たちにとっても、1月7日に食べる七草粥は、おせち料理で疲れた胃をやさしくいたわる、理にかなった食べ物だといえるでしょう。おもちなどを食べすぎてついつい青菜が不足がちな時期ですからね。七草は、セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、それから、スズナ、スズシロですがそれぞれに、効能効果があります。

 

 まず『セリ』には神経痛やリュウマチに効果があります。『ナズナ』は別名ぺんぺん草です。動脈硬化や高血圧に効きます。『ゴギョウ』は咳止めや痰を取りやすくします。この季節風邪の予防には、ピッタリです。ゴギョウには胃の炎症を抑えるという効能もあります。そのほか『ハコベラ』には整腸作用や口臭予防の効果があり、『ホトケノザ』には食中毒や筋肉痛をなくす効果があります。そして『スズナ』、カブです。カブは漢方の分類では、苦くて辛くて甘くて大根と違い温める作用があることです。胃腸を温めて内臓を丈夫にする性質があります。冷えから来る腹痛もやわらげます。体内にある余分な水分を取り除き、解毒作用があります。特に食べたものの滞りを除き、ガスを抜く作用は注目されています。お腹がよく張るという方はよくお召し上がり下さい。最後は『スズシロ』、大根ですが、消化不良、腹が張り、胃が痛むときは、大根をおろしておろし汁をコップ1杯絞り頂いておりました。便秘に利く整腸作用があり、消化酵素が含まれます。まさにお正月の弱った体にぴったりの食べ物ですね。


昭和堂薬局 | 2016年1月6日


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