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脂質の摂り方のヒント

 最近、日本人も高脂肪食が多くなって体重増加から病気になってしまう人が多くなってきました。欧米の人ほどの肥満になることはないのですが、日本人は肥満に対する耐性が高くないため、病気になりやすい傾向になります。その脂質の摂り方を工夫することにより、肥満を軽減できるのです。今回は、その工夫のためのお話しをしていきます。

 

 三大栄養素の一つである脂質は、我々人が活動するためのエネルギー、生体膜(細胞膜)の構成成分、生理活性物質の減量など様々な働きを担っています。脂質の主な構成成分である脂肪酸は炭化水素基の長さや二重結合の数や位置によって多くの種類が存在します。また、中性脂肪やコレステロールエステル、リン脂質、糖脂質などの脂質の構成成分になっています。

 

 脂肪酸の中でn-3系多価不飽和脂肪酸やn-6系多価不飽和脂肪酸は、我々人の体内では作ることができず、必須脂肪酸として食事から摂取する必要があります。n-6系多価不飽和脂肪酸であるアラキドン酸やn-3系多価不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)は、シクロオキシゲナーゼ、ポリキシゲナーゼ、シトクロムP450モノオキシゲナーゼなどの酵素により脂質メディエターに代謝されいろいろな働きをしています。

 

 人の体で熱産生をしている組織は、褐色脂肪組織(皮下脂肪)です。この褐色脂肪組織の高い熱産生能は褐色脂肪細胞内のミトコンドリア内膜上に存在する脱共役タンパク質1(UCP1)の機能によります。近年、特定な刺激により白色脂肪組織(内臓脂肪)にもUCP1が発現して高い熱産生能を示すベージュ脂肪細胞がエネルギー代謝に関わっていることが明らかになりました。

 

 これら褐色脂肪細胞やベージュ脂肪細胞が担っている代謝機能は、肥満や肥満による代謝異常症の予防や改善の可能性の指標として期待されています。また、食品中の脂肪成分による機能調整機構の存在が明らかになってきています。

 

 動物実験ではありますが、魚油(n-3系多価不飽和脂肪酸)摂取は高脂肪食接種によって誘導される体重増加を抑制し、褐色脂肪組織機能を亢進させることが解ってきました。また、n-3系多価不飽和脂肪酸摂取と褐色脂肪組織機能の関係を検討した研究はないのですが、n-3系多価不飽和脂肪酸や魚油の摂取で体重や体脂肪低下が観察された報告はあるようです。

 

 また、腸内細菌叢による食事からの脂肪酸代謝産物が脂肪組織の熱産生機能を調整していることも報告されています。

 

 メカイズムを詳しく書いてしまうと難しくなるので割愛しますが、n-3系多価不飽和脂肪酸と乳酸菌で肥満の予防や改善ができる可能性があるということです。但し、めちゃめちゃな生活習慣や食生活をしていたらうまくいかないでしょうけれど…


昭和堂薬局 | 2022年7月14日


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