私たちの周りに、偽物が多くなっています。
安くする為に、安くできる代替食品。私たちは生きていく為に食事をしますが、その中に知らず知らずに、体をむしばむ偽物の食べ物が増えていたら…。
消費者は安いものを求め、企業は安く売れて採算がとれるものを開発する時代。自然で、手間のかかる本物は、高くて売れない。
私たちの体は、食べ物からつくられています。そこに不自然な食べ物が入ることで、知らず知らずに健康を害するものが体に入って健康を害していたのなら…
安くてたっぷり使いたい
「安いのをたっぷり」が現代人の病気のもと
とろんと溶けた様子は本物そっくり。味はやや淡白だが、じっくり味わわないと違いに気付かない程度だった。
二〇〇八年、メーカー数社が発売し、外食や加工食品で需要が伸びたという”代替チーズ”を試食してみた。主原料は植物油脂。値上げされたチーズより、二,三割安いのが売りだ。
「コンビニなどから『値上げしたチーズをサンドイッチの具材から外したい』という話が出た。これまで通り、たっぷり使ってもらえるように代替品を開発しました」と、あるメーカーの広報は言う。
手ごろな”代替品”があれば、いつでもたっぷり食べられる。そんなニーズに応えた食品は、見慣れた中にもある。
マーガリンも、もともとは「人造バター」と呼ばれた代替品。最近では、さらに安価な「ファットスプレッド」(マーガリンより水分量が多い)が売り場を占める。
生クリームの半値のホイップクリームも主原料は植物油脂。アイスクリームの約五分の一で買える「ラクトアイス」も、主原料は糖類と植物油脂だ。
”本物”なら時々しか買わないものも、これなら買い物かごに二、三個入れられることになる。
「和食を基本に。でも、サラダを食べるならシソ油がいい。アレルギーを抑える『α(アルファ)-リノレン酸』が豊富ですから」
山口県の下関中央病院。1万人以上のアレルギー患者を診てきた医師永田良隆(68)が、アトピー性皮膚炎の子どもの母親に油の使い方を説明していた。
一般の植物性に多い「リノール酸」は体に必要なものだが、摂り過ぎはアレルギー性疾患やがん、動脈硬化などの原因になると指摘される。
「でも先生、シソ油って高いですよね」
「『安いのをたっぷり』が現代人の病気のもと。『良いものを控えめに』でいけば、生活習慣病にもならないですよ」
外来が終わり、永田はこう振り返った。
「昔、油は高価だった。私は子ども時代を佐賀県の唐津で過ごしましたが、天ぷらは『おくんち』のごちそうだったと、よく覚えています」
小売物価統計(東京都区部)を参考に試算すると、永田が二十歳だった1960年、食用油一リットルは米二キロ分とほぼ同じ価格。今で言えば、油一リットルが約千円することになるが、実際、昨年の油は一リットル約三百五十円。多用しやすくなった結果、加工食品を含めて一人が食べる植物油脂量も、六〇年の約四倍に膨らんでいる。
地元で取れた菜種を低温で焙煎、プレスすると、琥珀色の油が滴る。
福岡県築上町では今、昔ながらの菜種油づくりが復活している。〇八年に取れた油は、「幅二十メートルの五十メートルプール」と同じ面積(十アール)の畑当たりで約九十リットル。
一方、大量生産の食用油では、同量の菜種からより多くの油を搾れるよう、高温焙煎したり、溶剤のヘキサンを使ったりする方法が一般的だ。
製法が違えば、価格も変わる。最近の菜種油の相場は、一リットル換算で約二百三十円。築上町の菜種油は一リットル千円だが、「香りがよくておいしいと好評で、大事に使ってもらっている」(生産している湊営農協組合)。
六〇年以降、急速に原料輸入が拡大した植物油脂は、いまや自給率3%。「良いものを控えめに」という食べ方は、菜種畑の風景とともに、私たちの心から消えていったのかもしれない。
これは、西日本新聞(価格の向こう側)の抜粋です。
私達は、安い物を求めることで、本物を忘れかけています。
食事は、”命をいただく”と言うことです。生きていくための体に、自然界にはないような物から命がいただけるでしょうか?
本物を知り、健康的な生活が送れるように、もう一度食について、考える時期に来ているのかも知れません。